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JASTI 1-5-1(私生活の自由尊重)遵守の証拠

JASTI 1-5-1の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。

重要な注意点

ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えればそれで完ぺきということはなく、すべて揃わなくても十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。

詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。

JASTI 1-5-1 原文

工場は、従業員の私生活の自由を不当に制限してはならない。

達成すべきコミットメント

「私たちは、労働者等の私生活の自由を不当に制限しません。」

補足説明:法的根拠と国際基準

国際人権基準:世界人権宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)はプライバシーの権利を保障しています。国連「ビジネスと人権に関する指導原則」は、企業に対し人権尊重責任を求めており、これには私生活の自由も含まれます。ILOの諸条約も、労働者の尊厳と権利を保護する上で関連します。

日本の国内法:日本国憲法第13条は個人の尊重と幸福追求権を保障し、プライバシー権の基礎とされています。個人情報保護法は個人データの取り扱いを規律し、労働基準法や労働契約法は労働条件やハラスメント防止等を通じて間接的に私生活の保護に関わります。

コミットメント達成の意義

このコミットメントの達成は、労働者の基本的な人権である私生活の自由とプライバシーを尊重し、信頼と尊厳に基づいた職場環境を構築するために不可欠です。法的義務の遵守を超え、企業の倫理的責任と社会的評価を高めることにも繋がります。従業員のエンゲージメントや生産性の向上、そして企業ブランドの価値向上にも寄与します。

私生活の自由尊重:遵守を裏付ける証拠カテゴリー

1. 方針とガバナンスの確立

私生活の自由尊重を明記した方針を策定し、経営層がコミットしていることを示します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 私生活の自由/プライバシー尊重を明記した人権方針(取締役会承認済み)。
  • 経営トップによる私生活尊重へのコミットメント声明(ウェブサイト、報告書等)。
  • 行動規範、雇用契約、就業規則等への私生活尊重条項の統合。
  • 個人情報収集・利用に関する従業員からの同意取得記録とプライバシー通知。

2. データプライバシーと適正な監視

従業員の個人情報を保護し、監視は合法的かつ倫理的な範囲に限定します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 従業員向け個人情報保護方針とデータ収集・利用に関する通知記録。
  • データ主体アクセス要求(DSARs)への対応手順と記録。
  • 従業員監視に関する方針(目的、範囲、通知、データ管理方法を明記)。
  • 監視実施の正当な理由と、従業員への事前通知・同意の記録。

3. SNS利用と「つながらない権利」

従業員のSNS利用にバランスの取れた指針を設け、勤務時間外の私的時間を尊重します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 従業員向けソーシャルメディアポリシー(私的利用の尊重と企業利益保護のバランス)。
  • 勤務時間外の連絡を制限・推奨しない方針やガイドライン(「つながらない権利」)。
  • 上記方針に関する従業員・管理者への周知・研修記録。
  • ワークライフバランスに関する従業員アンケートデータ。

4. 社宅と私的活動の尊重

会社提供住居(社宅)でのプライバシーを保護し、勤務時間外の個人的活動を不当に制限しません。

遵守を示す証拠 (例):
  • プライバシーを尊重した社宅規程(立ち入り、訪問者、生活様式の尊重)。
  • 勤務時間外の個人的活動、交友、表現(信条、政治的所属等)を不当に制限しない方針。
  • 上記に関する管理者向け研修記録。
  • 関連する苦情がないこと、または公正に解決された記録。

5. 公正な採用とワークライフバランス

採用時に私生活に踏み込まず、過重労働を防ぎ健康的なワークライフバランスを推進します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 採用面接ガイドライン(私生活に関する不適切な質問の禁止を明記)。
  • 公正な採用に関する面接官向け研修記録。
  • 労働時間管理方針と実践(残業承認プロセス、正確な時間追跡)。
  • 「ノー残業デー」や柔軟な勤務形態(テレワーク等)の導入・利用状況。

6. 研修と透明なコミュニケーション

従業員と管理職が私生活尊重の方針と権利を理解するよう教育し、情報を容易にアクセス可能にします。

遵守を示す証拠 (例):
  • 私生活の自由、プライバシー権、関連方針に関する研修資料と修了記録。
  • 管理職向け研修(部下の私生活尊重、ハラスメント防止等)。
  • 関連方針のイントラネットやハンドブックへの掲載、定期的な周知。
  • 方針に関する質問や懸念を提起する方法の明確な案内。

7. 実効性のある苦情処理メカニズム

報復を恐れず懸念を報告できる、アクセス可能で機密性の高いチャネルを確立・運用します。

遵守を示す証拠 (例):
  • プライバシー侵害を含む人権問題に対応する苦情処理/内部告発方針。
  • 複数の報告チャネル(ホットライン、人事、第三者機関等)の提供。
  • 機密保持と報復禁止を保証する声明と実践。
  • 苦情の受付、調査、是正措置、再発防止策の匿名化された記録。

8. 監視・監査による継続的改善

方針遵守を定期的に検証し、従業員の声を聞き、法改正等に基づき改善を続けます。

遵守を示す証拠 (例):
  • 私生活/プライバシー保護に関する内部/外部監査報告書と改善措置記録。
  • 従業員調査(プライバシー、ワークライフバランス等に関する項目を含む)の結果と対応。
  • 方針・実務の定期的レビュー・更新記録(法改正、監査結果、苦情傾向を反映)。
  • 上記レビュー・更新に関する経営会議等の議事録。

持続的なコンプライアンスとベストプラクティスのための積極的措置

労働者の私生活の自由を尊重するコミットメントの達成には、方針の整備、透明な運用、従業員との対話、実効性のある救済措置、そして継続的な監視と改善のサイクルが不可欠です。

企業は、これらの証拠カテゴリーを参考に自社の取り組みを評価し、定期的な見直しを通じて、労働者の権利を真に尊重する企業文化を醸成していくことが求められます。これには、経営層のリーダーシップ、管理職への教育、そして全従業員の意識向上が鍵となります。

JASTI監査のコンサルティングは当事務所へ

JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。

当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修等ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修で、何度もファシリテーターや講師を務めてります。

JASTI監査に向けたコンサルティングは、当事務所にお任せください。