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JASTI 2-5 遵守の証拠

JASTI 2-5の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。

JASTI 2-5 原文

工場は、工場所在地の法令に従い、18 歳未満の未成年に対し危険な労働、 例えば有害物を扱う業務、フォークリフトの運転などをさせてはならな い。

達成すべきコミットメント

「私たちは、事業場所在地の法令に従い、18歳未満の未成年に対し危険な労働、例えば有害物を扱う業務、フォークリフトの運転などをさせません。」

補足説明:法的根拠と国際基準

日本の国内法:労働基準法(第62条 危険有害業務の禁止、第63条 坑内労働の禁止、年少者労働基準規則第8条)。

国際労働基準(ILO条約):ILO第138号条約(就業最低年齢)、ILO第182号条約(最悪の形態の児童労働)。

企業は、国内法を遵守するだけでなく、国際人権基準の精神も尊重し、未成年者が危険に晒されることのないよう、積極的なシステムを構築・維持することが求められます。

コミットメント達成の意義

このコミットメントの達成は、単なる法的義務の遵守に留まらず、若年労働者の安全と健康を保護し、児童労働を防止するという国際的な人権課題への貢献を意味します。これは、従業員、顧客、投資家、社会全体からの信頼を構築し、企業の持続可能性を確実にする基盤となります。

遵守を裏付ける証拠をカテゴリー別に整理

1. 方針と内部規程

未成年者による危険有害業務への従事を明確に禁止する、正式な企業方針を文書化します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 未成年者労働に関する正式な企業方針文書(ILO条約、日本法への言及を含む)。
  • 従業員ハンドブック、行動規範、サプライヤー行動規範への当該方針の組み込み記録。
  • 方針の周知徹底に関する記録(社内通達、署名済み受領書、イントラネット掲載記録)。

2. 年齢確認と採用プロセス

全ての新規採用者に対し、公的証明書による義務的な年齢確認手続きを実施します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 従業員ファイルに保管された年齢確認書類の写し(住民票の写し、公的身分証明書など)。
  • 年齢確認実施記録ログ(確認日、確認者、確認書類種別)。
  • 採用時チェックリスト(年齢確認項目を含む)。

3. 業務割り当てとリスク管理

全ての職務についてリスク評価を実施し、危険有害と分類される業務を特定します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 職務リスク評価報告書(年少者労働基準規則第8条のリストを参照)。
  • 18歳未満の個人を危険有害業務に割り当てないことを保証する業務割り当てプロトコル(HRシステム制御を含む)。
  • 若年労働者の業務割り当て記録(特に危険有害業務区域への非配属を示すもの)。

4. 研修と意識向上

管理者、監督者、人事担当者に対し、未成年者の危険有害業務に関する研修を実施します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 研修資料(児童労働関連法規、企業方針、各自の責任)。
  • 研修受講記録(出席者名簿、能力評価)。
  • 若年労働者向け権利・禁止業務説明モジュールの導入記録。

5. 監視、監査と監督

未成年者の危険有害業務禁止規定の遵守状況を「具体的に」確認するための定期的な内部監査を実施します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 内部監査計画・報告書(未成年者の雇用、年齢確認、業務割り当ての観察項目を含む)。
  • 特定された不遵守事項に対する是正措置の文書化された記録。
  • 職場点検記録。

6. 記録保持と文書管理

関連する全ての記録を体系的かつ綿密に維持します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 年齢確認書類(労働基準法第57条に基づく)および雇用契約書。
  • 研修出席者名簿および資料。
  • 職務リスク評価報告書および業務割り当て記録(特に若年労働者に関するもの)。
  • 内部監査報告書、苦情とその解決記録。

7. 苦情処理メカニズム

未成年者を含む全ての従業員が、報復を恐れることなく懸念を報告できるメカニズムを構築します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 苦情申立制度の文書化された手順(アクセス可能性、秘密厳守、報復禁止の明記)。
  • 苦情の受付、調査、対応、解決に関する記録。
  • 是正措置の実施記録。

8. サプライヤー管理

サプライヤーや請負業者に対しても、未成年者労働の禁止に関するデューデリジェンスを実施します。

遵守を示す証拠 (例):
  • サプライヤー行動規範の伝達記録。
  • サプライヤー契約における関連条項の組み込み記録。
  • ハイリスクサプライヤーに対するデューデリジェンス(監査、アンケート等)の実施記録。

持続的なコミットメントと人権尊重文化の醸成

未成年者労働の安全確保コミットメントの遵守を実証するには、明確な方針、適切なリスク管理、担当者への研修、確実な記録保持、そして実効性のある苦情処理メカニズムからなる包括的なシステムが不可欠です。これらの内部システムを継続的に見直し、改善することで、持続的なコンプライアンスと「具体的証拠」の即時的な利用可能性を確保することが推奨されます。

企業は、本報告書で提示された枠組みやチェックリストに基づき、定期的な自己監査を実施し、コンプライアンスを継続的に維持・改善していくことで、若年労働者の保護に貢献し、社会からの信頼を得ることが求められます。

重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。