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JASTI 2-6 遵守の証拠

JASTI 2-6の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。

JASTI 2-6 原文

工場は、18 歳未満の未成年に対し、工場所在地の法令に従い、労働時間の 制限を設けなくてはならない。

達成すべきコミットメント

「私たちは、18歳未満の未成年に対し、事業場所在地の法令に従い、労働時間の制限を設けます。」

補足説明:法的根拠と国際基準

日本の国内法:労働基準法(第60条 労働時間、第61条 深夜業、第62条 危険有害業務の禁止、第57条 年齢証明)。

国際労働基準(ILO条約):ILO第138号条約(就業最低年齢)、ILO第182号条約(最悪の形態の児童労働)、ILO第79号条約(年少者の非工業的職業における夜業)。

企業は、国内法を遵守するだけでなく、国際人権基準の精神も尊重し、未成年者が過度な労働時間や夜間労働に晒されることのないよう、積極的なシステムを構築・維持することが求められます。

コミットメント達成の意義

このコミットメントの達成は、単なる法的義務の遵守に留まらず、若年労働者の安全と健康を保護し、健全な発達と教育の機会を確保するという国際的な人権課題への貢献を意味します。これは、従業員、顧客、投資家、社会全体からの信頼を構築し、企業の持続可能性を確実にする基盤となります。

遵守を裏付ける証拠をカテゴリー別に整理

1. 方針とガバナンス

未成年者の労働時間制限、深夜業、危険有害業務への従事を明確に禁止する正式な企業方針を文書化します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 未成年者労働に関する正式な企業方針文書(日本の労働基準法、ILO条約への言及を含む)。
  • 従業員ハンドブック、行動規範、サプライヤー行動規範への当該方針の組み込み記録。
  • 方針の周知徹底に関する記録(社内通達、イントラネット掲載記録)。

2. 年齢確認と雇用記録

全ての新規採用者に対し、公的証明書による義務的な年齢確認手続きを実施し、関連する雇用記録を安全に維持します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 従業員ファイルに保管された年齢確認書類の写し(労働基準法第57条に基づく戸籍証明書または住民票記載事項証明書)。
  • 年齢確認実施記録ログ(確認日、確認者、確認書類種別)。
  • 雇用契約書、労働者名簿、親権者の同意書(該当する場合)。

3. 労働時間と給与

正確な勤怠記録、勤務スケジュール、および給与記録を通じて、未成年者の労働時間制限への遵守を証明します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 正確かつ検証可能な勤怠記録(タイムカード、電子ログ)。
  • 未成年者の労働時間制限(1日8時間、週40時間、深夜業禁止など)に準拠した勤務スケジュール。
  • 給与記録および給与明細(禁止された時間外労働・休日労働の支払いがないことを示す)。
  • スケジューリングシステムにおける未成年者労働時間超過防止のための安全装置の記録。

4. 深夜業の禁止

日本の労働基準法(第61条)に基づき、18歳未満の未成年者に対する午後10時から午前5時までの深夜業を厳格に禁止します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 深夜業禁止に関する社内規定およびその周知記録。
  • 勤務スケジュールが深夜業時間帯を避けて組まれていることの確認記録。
  • 深夜業に関する勤怠記録の監視および違反がないことの報告。
  • 深夜業の例外が適用される場合の、労働基準監督署長の許可記録(該当する場合)。

5. 研修と意識向上

管理者、監督者、人事担当者に対し、未成年者の労働時間制限、深夜業、および危険有害業務に関する研修を実施します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 研修資料(児童労働関連法規、企業方針、各自の責任、特に労働時間制限と深夜業に関する内容)。
  • 研修受講記録(出席者名簿、能力評価)。
  • 未成年従業員向けに、労働時間、休憩、深夜業・時間外労働・休日労働の禁止に関する権利を説明する資料の提供記録。

6. 監視、監査と監督

未成年者の労働時間制限、深夜業、危険有害業務禁止規定の遵守状況を具体的に確認するための定期的な内部監査を実施します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 内部監査計画・報告書(未成年者の雇用、年齢確認、業務割り当て、特に労働時間・深夜業の観察項目を含む)。
  • 特定された不遵守事項に対する是正措置の文書化された記録。
  • 職場点検記録(労働時間と業務内容の確認)。

7. 記録保持と文書管理

未成年者の労働時間制限遵守に関連する全ての記録を体系的かつ綿密に維持し、容易にアクセス可能にします。

遵守を示す証拠 (例):
  • 年齢確認書類、雇用契約書、労働者名簿。
  • 勤怠記録、勤務スケジュール、給与記録。
  • 研修出席者名簿および資料。
  • 内部監査報告書、苦情とその解決記録。

8. 苦情処理メカニズム

未成年者を含む全ての従業員が、報復を恐れることなく労働時間(またはその他の問題)に関する懸念を報告できるメカニズムを構築します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 苦情申立制度の文書化された手順(アクセス可能性、秘密厳守、報復禁止の明記)。
  • 苦情の受付、調査、対応、解決に関する記録。
  • 是正措置の実施記録。

9. サプライヤー管理

サプライヤーや請負業者に対しても、未成年者労働の禁止および労働時間制限に関するデューデリジェンスを実施します。

遵守を示す証拠 (例):
  • サプライヤー行動規範の伝達記録(未成年者労働および労働時間に関する条項を含む)。
  • サプライヤー契約における関連条項の組み込み記録。
  • ハイリスクサプライヤーに対するデューデリジェンス(監査、アンケート等)の実施記録。

持続的なコミットメントと人権尊重文化の醸成

未成年者の労働時間制限遵守を実証するには、明確な方針、適切な労働時間管理、担当者への研修、確実な記録保持、そして実効性のある苦情処理メカニズムからなる包括的なシステムが不可欠です。これらの内部システムを継続的に見直し、改善することで、持続的なコンプライアンスと「具体的証拠」の即時的な利用可能性を確保することが推奨されます。

企業は、本報告書で提示された枠組みやチェックリストに基づき、定期的な自己監査を実施し、コンプライアンスを継続的に維持・改善していくことで、若年労働者の保護に貢献し、社会からの信頼を得ることが求められます。

重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。

JASTI監査対策のご相談は、私どもHCDコンサルティングへ

JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。

当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修で、合計7度ファシリテーターを務めました。

JASTI監査に向けたコンサルティングは、私どもHCDコンサルティングにお任せください。