JASTI 5-3-5 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。
JASTI 5-3-5 原文
工場は、工場所在地の法令に従い、可燃性の原料や最終製品を、隔離さ れ、明示された場所に保管し、蛍光灯や電球など熱を発する場所から十分 に離れた状態(可燃性の原料や製品が、熱を発する蛍光灯、電球から50 cm 以上離れている)で保管しなくてはならない。
達成すべきコミットメント
「私たちは、事業場所在地の法令に従い、可燃性の原料や最終製品を、隔離され、明示された場所に保管し、蛍光灯や電球など熱を発する場所から十分に離れた状態(可燃性の原料や製品が、熱を発する蛍光灯、電球から50cm以上離れている)で保管します。」
補足説明:法的根拠
消防法:「指定数量」以上の危険物の貯蔵・取扱い基準を定めます。異なる種類の危険物の「隔離」保管の根拠となります。
市町村条例(火災予防条例):指定数量未満の危険物や指定可燃物の管理を規定します。熱源からの離隔距離(例: 50cm以上)の具体的な根拠となることが多いです。
労働安全衛生法:作業場における労働者の安全確保の観点から、危険物の表示や熱源からの離隔、換気などを定めています。
コミットメント達成の意義
可燃性物質の不適切な保管は、火災・爆発といった重大な事故に直結します。本コミットメントの遵守は、労働者の生命と安全を守り、事業継続性を確保し、地域社会への責任を果たすための基本であり、企業の信頼性の根幹をなすものです。
遵守を裏付ける証拠ポートフォリオ
1. 可燃物の特定と分類
管理対象となる全ての可燃性物質を正確に把握し、その危険性を理解します。
- 全ての化学物質を網羅したマスター在庫リスト。
- 各物質の安全データシート(SDS)の管理記録。
- 混載禁止物質を明記した危険性マトリックス。
2. 隔離・明示された保管
可燃性物質を危険性の種類ごとに分け、指定された安全な場所で管理します。
- 「引火性液体」「可燃性固体」等、表示された保管庫の写真。
- 漏洩防止措置(スピルパレット等)が施された保管状況の写真。
- 分別保管ルールを定めた社内手順書。
3. 消防法に基づく許認可
法令で定められた量の危険物・可燃物を保管するための公的な許可を得ます。
- 危険物貯蔵所/取扱所の設置許可証、完成検査済証。
- 少量危険物/指定可燃物の貯蔵取扱届出書(消防署の受理印があるもの)。
4. 熱源からの離隔措置
蛍光灯や暖房器具等の熱源から可燃物を遠ざけ、引火・発火リスクを排除します。
- メジャーを当て、熱源から50cm以上離れていることを示す写真。
- 「火気厳禁」等の警告表示の写真。
- 電気設備の定期点検記録簿。
5. 火気・静電気対策
目に見えない着火源である静電気の発生を防ぎ、火気管理を徹底します。
- 接地(アース)設備の設置・点検記録。
- 帯電防止服、除電装置等の使用記録。
- 換気設備の設置・点検記録。
6. 消火設備の設置と管理
万一の火災に備え、初期消火が確実に行える設備を整備・維持します。
- 消防用設備等点検結果報告書の控え(消防署受理印付)。
- 消火器の配置図と設置状況の写真。
- 自動火災報知設備の作動点検記録。
7. 緊急時対応と訓練
火災発生時に従業員が迅速かつ安全に行動できるよう、計画と訓練を徹底します。
- 消防計画(消防署届出済)。
- 避難・消火訓練の実施記録と写真。
- 訓練後のレビュー議事録と改善計画。
- 緊急連絡体制図、避難経路図の掲示。
8. 教育訓練と管理体制
全従業員が危険性を理解し、安全な取扱いを実践する文化を醸成します。
- 可燃物取扱いに関する安全衛生教育の記録。
- 内部安全監査の報告書と是正措置記録。
- 安全衛生委員会で火災予防を議題とした議事録。
統合的管理による火災予防
可燃物の安全管理は、単一の対策では実現できません。本インフォグラフィックで示した各要素を、リスクアセスメントを基軸としたPDCAサイクルで継続的に管理・改善していくことが、火災・爆発災害を未然に防ぎ、信頼される安全文化を築くための鍵となります。
重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。
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JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。
当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修)で、合計7度ファシリテーターを務めました。
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