JASTI 5-4-4 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。
JASTI 5-4-4 原文
工場は、設備に巻き込み防止等の安全装置を設置しなければならない。加 圧式裁断機を使用する場合は、「両手スイッチ可動」の装置、ミシ ンには「針ガード」、鳩目打ち機、ボタン付ミシン等は打ち損じや 割れたボタンによる怪我を防止するためのガード、ミシン等のホイー ル、駆動ベルトには、巻き込み防止のためのカバーを付けなければならな い。
達成すべきコミットメント
「私たちは、設備に巻き込み防止等の安全装置を設置します。加圧式裁断機を使用する場合は、「両手スイッチ可動」の装置、ミシンには「針ガード」、鳩目打ち機、ボタン付ミシン等は打ち損じや割れたボタンによる怪我を防止するためのガード、ミシン等のホイール、駆動ベルトには、巻き込み防止のためのカバーを付けます。」
補足説明:法的根拠
労働安全衛生法 第20条:事業者に機械による危険を防止するために必要な措置を講じることを義務付けています。
労働安全衛生規則 第101条:機械の回転軸、歯車、ベルト等の危険な部分に、覆い(カバー)や囲い(ガード)を設置することを具体的に義務付けています。
国際規格(ISO 12100等):機械安全の設計原則として、リスクアセスメントに基づき、ガード等の安全装置を設置する階層的アプローチを推奨しています。
コミットメント達成の意義
機械設備による「巻き込み」「挟まれ」「切創」などの労働災害は、重篤な結果に繋がりかねません。適切な安全装置の設置と管理は、労働者の生命と身体を守るための絶対的な要件であり、安全で生産性の高い職場環境の基盤となります。
遵守を裏付ける証拠ポートフォリオ
1. リスクアセスメント
機械の危険性を特定・評価し、必要な安全装置を論理的に決定するプロセスを示します。
- 機械ごとのリスク評価記録。
- 巻き込み、挟まれ等の危険源の特定と、対策決定のプロセス。
- 定期的なリスク評価の見直し記録。
2. 物理的な安全装置の設置
コミットメントに掲げられた安全装置が、実際に全ての対象機械に設置されていることを視覚的に証明します。
- 両手スイッチ、針ガード、巻き込み防止カバー等の設置写真。
- ガードが堅固に固定されていることを示す詳細写真。
- インターロック機能の作動確認ビデオ。
3. 点検・保守の記録
設置された安全装置が、常に有効に機能し、安全な状態に維持されていることを証明します。
- 安全装置の定期点検チェックリストと実施記録。
- 動力プレス機械等の特定自主検査記録票。
- 不具合発見時の修繕・是正措置の記録。
4. 安全作業手順書 (SOP)
安全装置の正しい使用方法を含め、標準化された安全な作業手順を確立していることを示します。
- 機械ごとの安全作業手順書。
- 安全装置の操作・確認手順。
- 清掃・修理時のロックアウト/タグアウト(LOTO)手順。
5. 教育・訓練の記録
労働者が機械の危険性を理解し、安全装置を正しく使用する技能を有していることを証明します。
- 機械安全に関する教育の実施記録。
- 動力プレス等の特別教育の修了記録。
- 訓練教材、参加者名簿、理解度テストの結果。
6. 新規機械の安全確認
新しい機械を導入する際に、使用開始前に安全性が確保されていることを検証します。
- 機械の購入仕様書、メーカーの取扱説明書。
- 安全規格適合証明書(CEマーキング等)。
- 導入時の受入検査・試運転の記録。
7. インシデント・是正措置
事故やニアミスから学び、再発防止のために安全対策を継続的に改善する体制を示します。
- 労働災害・ニアミス報告書。
- 原因調査報告書と根本原因の分析。
- 安全装置の改善等の是正措置計画と実施記録。
8. 労使による改善活動
現場の声を反映し、組織全体で安全性を向上させる仕組みが機能していることを示します。
- 安全衛生委員会で機械安全を議題とした議事録。
- 従業員からの改善提案と対応記録。
- 安全パトロール記録。
体系的な管理による機械災害の防止
機械の安全は、単にガードを付けるだけでは確保できません。リスクアセスメントに基づき、適切な安全装置を設置し、その機能を定期的に点検・保守し、正しい使用方法を教育するという一連のプロセスを体系的に管理することが、機械による労働災害を確実に防止する鍵となります。
重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。
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JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。
当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修)で、合計7度ファシリテーターを務めました。
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