JASTI 5-6-5 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。
JASTI 5-6-5 原文
工場は、工場所在地の法令に従い、消防設備(火災報知器、自動火災警報 設備、消火器)を定期的に点検しなくてはならない。
達成すべきコミットメント
「私たちは、事業場所在地の法令に従い、消防設備(火災報知器、自動火災警報設備、消火器)を定期的に点検します。」
補足説明:法的根拠
消防法 第17条の3の3:防火対象物の関係者に対し、消防用設備等を定期的に有資格者(消防設備士等)に点検させ、その結果を消防署長等に報告することを義務付けています。
報告頻度:工場や寮などの特定防火対象物は年1回、事務所などの非特定防火対象物は3年に1回の報告が必要です。
コミットメント達成の意義
消防設備は、設置されているだけでは意味がありません。定期的な点検は、これらの設備が経年劣化や不具合なく、いざという時に確実に機能することを保証するために不可欠です。これは、火災による被害を最小限に抑え、人命と財産を守るための最も基本的な責務です。
遵守を裏付ける証拠ポートフォリオ
1. 法定点検報告書(公式証明)
法令に基づく点検・報告義務を履行していることを示す、最も強力な証拠です。
- 消防用設備等点検結果報告書の控え(消防署の受理印があるもの)。
- 点検者(消防設備士等)の資格情報が記載された一覧表。
- 過去数年分の報告書(継続的なコンプライアンスの証明)。
2. 消火器の点検内容
消火器がいつでも放射可能で、有効期限内であることを具体的に証明します。
- 消火器具点検票(圧力、製造年、外観、部品の状態を記録)。
- 圧力ゲージが正常範囲にあることを示す写真。
- 製造年が有効期限内(例:10年)であることを示す写真。
3. 火災報知器の点検内容
火災報知器が火災を早期に検知し、確実に警報を発する機能を維持していることを示します。
- 自動火災報知設備点検票。
- 感知器の作動試験、受信機の機能確認の記録。
- 非常電源の動作確認記録。
4. 点検済票と保守記録
適正な点検が実施されたことを現場で視覚的に証明し、日常的な管理体制を示します。
- 各設備に貼付された有効な「点検済票」の写真。
- 内部で実施する月次点検等のチェックリストと実施記録。
- 業務委託契約書(外部業者に委託している場合)。
5. 是正措置の記録
点検で不備が発見された際に、速やかかつ適切に対応し、改善していることを示します。
- 点検結果に基づく改修計画書・完了報告書。
- 期限切れ消火器の交換や、故障した感知器の修理記録。
- 是正措置前後の写真。
6. 労使による改善活動
現場の声を反映し、組織全体で防火管理体制を向上させる仕組みを示します。
- 安全衛生委員会で消防設備点検の結果を議題とした議事録。
- 従業員からの改善提案(ヒヤリハット報告等)と対応記録。
7. 教育・訓練
従業員が設備の重要性を理解し、緊急時に適切に行動できるよう備えます。
- 消火器や火災報知器の作動時の対応に関する訓練記録。
- 消防計画の周知記録。
8. 記録の一元管理
関連文書を体系的に管理し、いつでも追跡・検証できるようにします。
- 「防火管理維持台帳」としてファイリングされた文書群。
- 法定保存期間(3年等)の遵守状況。
体系的な管理による実効性の確保
消防設備の点検は、個別の活動の寄せ集めでは意味がありません。有資格者による法定点検を確実に実施し、その結果を消防署へ報告し、日々の内部管理と従業員への教育を組み合わせることで、初めて「いつでも使える」実効性のある防火体制が構築されます。
重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。
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JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。
当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修)で、合計7度ファシリテーターを務めました。
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