JASTI 5-7-4の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。
JASTI 5-7-4 原文
階段には、工場所在地の法令に従い、非常灯を設置しなくてはならない。 注:日本においては、屋外階段、開放階段、住居(寮を含む)については 適用外。
達成すべきコミットメント
「私たちは、事業場所在地の法令に従い、屋外階段、開放階段、住居(寮を含む)内の階段のいずれにも当てはまらない階段には、非常灯を設置します。」
補足説明:法的根拠と国際基準
建築基準法:建築基準法施行令第126条の2に基づき、屋内階段等の避難経路には、停電時に床面で2ルクス以上の照度を確保できる非常灯の設置が義務付けられています。
消防法:非常灯は消防用設備等の一部と見なされ、消防法第17条の3の3に基づき、専門家による定期的な点検と消防署への報告が義務付けられています。
コミットメント達成の意義
火災や停電といった緊急時に、避難経路の視認性を確保することは、パニックを防ぎ、安全かつ迅速な避難を実現するために不可欠です。非常灯は、暗闇の中で命を守るための「道しるべ」となります。
遵守を裏付ける証拠をカテゴリー別に整理
1. 承認済み設備図面
非常灯が法令要件に基づき計画されたことを証明する、設計段階の証拠です。
- 建築確認済証と合わせて提示される、承認済みの建築設備図面。
- 非常灯の設置位置、種類、配線系統が網羅的に記載。
2. 照度計算書
非常灯の性能が法令基準(2ルクス以上)を満たすことを数値で裏付けます。
- 避難経路の床面で最低照度を確保できることを示す詳細な計算結果報告書。
- 非常灯の機種ごとの光束や配光特性を考慮した計算。
3. 建築設備定期検査報告書
建築基準法に基づき、非常灯が継続的に機能維持されていることを証明します。
- 建築設備検査員(専門資格者)による定期検査の結果報告書。
- 特定行政庁へ提出した報告書の控え。
- 検査に基づく補修や措置の記録。
4. 消防用設備等点検結果報告書
消防法に基づき、非常灯の点検義務が履行されていることを証明する最重要証拠です。
- 消防設備士等による定期点検の結果報告書。
- 管轄消防署の「収受印」が押された副本の保管。
- 特定防火対象物(工場等)は年1回、非特定は3年に1回の報告。
5. 写真・ビデオ証拠
文書だけでは伝わらない、現場の実際の設置状況と機能性を視覚的に補強します。
- 日付入りの、実際の設置状況を示す写真。
- 非常灯が点灯した際の視覚的な効果を示す写真やビデオ。
- 避難経路に障害物がないことを示す写真。
6. 機器仕様書と認証
設置された非常灯自体の品質と、日本の安全基準への適合を証明します。
- 設置された非常灯の製品カタログや技術仕様書。
- 日本照明工業会(JIL)マークなど、品質認証を示す文書。
- 製造者による性能保証書。
7. 訓練と教育
非常灯の存在と重要性が、全従業員に周知されていることを示します。
- 非常灯の存在を周知する内容を含む、消防計画と避難訓練の実施記録。
- 避難経路図の掲示と、その内容を説明した安全衛生教育の記録。
8. リスクアセスメント
非常灯の設置が、潜在的な停電や火災リスクへの対策であることを示します。
- 停電や火災をハザードとして特定し、非常灯の設置を管理策として定めたリスクアセスメント記録。
- 定期的な見直しと、改善措置の記録。
統合コンプライアンス・ポートフォリオの重要性
非常灯のコンプライアンス証明は、単一の証拠ではなく、複数の証拠が相互に連携することでその信頼性が飛躍的に高まります。設計段階の「静的証拠」と、運用・維持管理の「動的証拠」を組み合わせることが不可欠です。
承認図面(設計)、定期検査報告書(維持管理)、写真(現場状況)などを統合的に管理・提示することで、設計から運用、継続的な改善に至る一貫した安全管理体制を示し、企業の高い安全意識を証明します。
重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。
JASTI監査対策のご相談は、私どもHCDコンサルティングへ
JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。
当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修)で、合計7度ファシリテーターを務めました。
JASTI監査に向けたコンサルティングは、私どもHCDコンサルティングにお任せください。