JASTI 5-11-3 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。
JASTI 5-11-3 原文
工場は、工場所在地の法令に従い、爆発・引火のおそれがある化学物質の 貯蔵場所を、禁煙としなくてはならない
達成すべきコミットメント
「私たちは、事業場所在地の法令に従い、爆発・引火のおそれがある化学物質の貯蔵場所を、禁煙とします。」
補足説明:法的根拠
消防法:引火性・可燃性物質の近くでの火気使用を広く禁止しており、喫煙もこれに含まれます。危険物の貯蔵・取扱場所では厳格な火気管理が求められます。
労働安全衛生法:特定化学物質障害予防規則(特化則)は、対象作業場での喫煙を明確に禁止しています。また、リスクアセスメントに基づき、着火源となる喫煙のリスクを管理することが事業者に義務付けられています。
コミットメント達成の意義
化学物質貯蔵場所での火災・爆発事故は、労働者の生命を脅かすだけでなく、事業の継続を不可能にするほどの壊滅的な被害をもたらす可能性があります。禁煙の徹底は、このような重大災害の引き金となる着火源を断つための、最も基本的かつ効果的な予防措置です。
遵守を裏付ける証拠をカテゴリー別に整理
1. 「禁煙」「火気厳禁」標識
ルールが物理的に明示され、全ての関係者に周知されていることを示す最も直接的な証拠です。
- 法令に準拠した標識が、貯蔵場所の入口や周辺に掲示されている写真。
- 多言語表記など、外国人労働者への配慮がされた標識の写真。
2. リスクアセスメント記録
禁煙ルールが、化学物質の危険有害性評価に基づく、論理的なリスク管理策であることを証明します。
- 喫煙を着火源として特定し、リスク低減措置として「禁煙」を定めたリスクアセスメント記録。
- 労働者の意見聴取の記録。
3. 安全衛生方針・社内規程
経営層が火災予防にコミットし、全社的なルールとして禁煙を定めていることを示します。
- 火災予防や化学物質管理に関する方針書や社内規程。
- 危険場所での禁煙を明確に定めた条項。
4. 施設図面と区域設定
禁煙ルールが、計画的な区域管理の一環として実施されていることを証明します。
- 事業所のレイアウト図。
- 化学物質貯蔵場所と、禁煙・火気厳禁区域が明確に色分け・表示された図面。
5. 日常パトロール・監査記録
ルールが形骸化せず、日常的に監視・徹底されていることを示す動的な証拠です。
- 日付・署名入りの安全パトロールや内部監査のチェックリスト。
- 「禁煙ルールの遵守状況」の確認項目と結果。
- 不備発見時の是正措置報告書。
6. 安全衛生教育の記録
全従業員が禁煙ルールの重要性を理解し、遵守する知識と意識を持っていることを示します。
- 雇入れ時教育や定期教育の研修資料と出席者名簿。
- 火災リスクと禁煙ルールに関する教育内容の記録。
7. 安全衛生委員会議事録
労働者の意見を反映し、組織として禁煙ルールの徹底に取り組んでいることを証明します。
- 禁煙ルールに関する討議や、関連するヒヤリハット報告が記載された議事録。
- 委員会での決定に基づく改善措置の記録。
8. 貯蔵場所の隔離・対策記録
禁煙ルールに加え、着火源を物理的に排除する多重の安全対策を示します。
- 貯蔵場所が他の設備から安全な距離を保っていることを示す写真。
- 静電気防止措置(アース、除電装置等)の設置・点検記録。
9. SDSと化学物質リスト
禁煙対象となる化学物質が、SDS情報に基づき正確に特定されていることを示します。
- 化学物質在庫リスト。
- SDSの「安全対策」の項目で、禁煙や火気厳禁の指示がある物質のリストアップ。
統合コンプライアンス・ポートフォリオの重要性
禁煙ルールの遵守は、単一の証拠では証明できません。リスクアセスメント(計画)、標識設置や教育(実行)、パトロールや監査(評価)、そしてレビューに基づく改善(改善)という、一連のPDCAサイクルを示す証拠の組み合わせが不可欠です。
これらの証拠を体系的に管理・提示することで、禁煙という一つのルールが、より広範な火災・爆発防止のための総合的なリスク管理システムの一部として、効果的に機能していることを説得力をもって証明できます。