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JASTI 6-5 遵守の証拠

JASTI 6-5 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。

JASTI 6-5 原文

工場は、外国人労働者の母国語で、書面等により必要な内容を含む雇用契 約を締結し、または労働条件通知書を交付し、契約内容や賃金に関する規 定について、従業員が理解できる言語で契約、及び周知しなくてはならな い。労働者の出国前に、実際の労働条件と同一の内容の契約書を母国語ま たは理解できる言語で締結しなくてはならない。

達成すべきコミットメント

「私たちは、外国人労働者に対し、彼らが十分に理解できる言語(母国語等)で雇用契約書または労働条件通知書を提供します。また、労働者が母国を出国する前に、実際の労働条件と同一の条件で契約が締結されることを保証します。」

補足説明:法的根拠と国際人権

日本の国内法:労働基準法に加え、技能実習法や特定技能制度に関する省令・要領等で、外国人労働者への理解可能な言語での説明や文書交付が具体的に求められています。

国際人権基準:ILOの「公正な募集に関する一般原則」は、出国前の契約締結や契約の差し替え防止を、搾取を防ぐための重要な原則として定めています。

遵守を裏付ける証拠をカテゴリー別に整理

1. 方針と多言語文書

外国人労働者への公正な処遇を方針として定め、契約書等を多言語で準備します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 外国人労働者の公正な雇用に関する社内方針。
  • 労働条件通知書、雇用契約書、就業規則の翻訳版(版管理されたもの)。
  • 厚労省や出入国在留管理庁の多言語モデル様式の活用記録。

2. 理解の確保と説明

単に文書を渡すだけでなく、労働者が契約内容を真に理解できるよう、積極的な説明を行います。

遵守を示す証拠 (例):
  • 契約説明会の記録(議題、出席者、使用言語)。
  • 有資格の通訳者を介した説明の記録。
  • 賃金や控除項目について丁寧に説明した際の記録。
  • 内容を理解したことを確認する労働者の署名入り確認書。

3. 出国前の契約締結

労働者が母国を出る前に、理解できる言語で雇用契約を締結し、十分な情報に基づいた意思決定を可能にします。

遵守を示す証拠 (例):
  • 出国日より前に日付が記載され、署名された雇用契約書のコピー。
  • 出国前に契約書を送付・受領したことを示す通信記録。

4. 契約差し替えの防止

出国前に合意した労働条件と、日本到着後の実際の条件が同一であることを保証し、搾取的な慣行を排除します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 契約差し替えを明確に禁止する社内方針。
  • 出国前と入国後の契約書を比較検証するプロセスの記録。
  • 到着後のオリエンテーションで条件が同一であることを再確認した記録。

5. 特定在留資格の要件遵守

技能実習生や特定技能外国人など、在留資格ごとに定められた、より厳格な言語・説明要件を確実に遵守します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 技能実習法等に基づく、母国語が併記された雇用契約書。
  • 特定技能雇用契約の多言語モデル様式の使用記録。
  • 待遇に関する重要事項説明書(母国語併記)の説明記録。

6. 関係者への研修

人事担当者や管理職に対し、外国人雇用に関する法令、人権、異文化理解に関する研修を定期的に行います。

遵守を示す証拠 (例):
  • 研修の実施記録(内容、日時、参加者リスト)。
  • 契約言語や出国前合意の重要性を盛り込んだ研修資料。
  • 研修後の理解度テストやアンケートの結果。

7. 相談・苦情処理体制

労働者が契約内容や待遇について、母国語で安心して相談できる窓口を設け、実効性を確保します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 多言語で案内された相談窓口の設置記録。
  • 機密性と報復禁止を保証する苦情処理規定。
  • 相談・苦情の受付・対応記録(匿名化)。

8. 募集機関への監督責任

外部の募集機関を利用する場合、その機関が公正な募集原則を遵守していることを確認・監督します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 募集機関選定時のデュー・ディリジェンス記録。
  • 契約差し替え防止等を義務付けた募集機関との契約書。
  • 募集機関の業務に対する定期的な監査記録。

9. 監査と継続的改善

外国人雇用のプロセス全体を定期的に監査し、特定された課題に基づいて是正措置を講じます。

遵守を示す証拠 (例):
  • 内部または第三者による監査報告書。
  • 監査で発見された不適合事項に対する是正措置計画。
  • 外国人労働者本人へのヒアリングを含む監査の記録。

結論:信頼と尊厳に基づく外国人材の受け入れ

外国人労働者の権利保護は、言語の壁を越えた真の理解と同意から始まります。出国前の公正な情報提供と契約締結、そして入国後の約束の履行は、搾取を防ぎ、信頼関係を築くための絶対条件です。本インフォグラフィックで示した体系的な証拠を通じて、企業は国内法と国際人権基準の両方を尊重する責任ある雇用主であることを示し、多様な人材が活躍できる持続可能な事業基盤を構築することができます。

重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。

JASTI監査対策のご相談は、私どもHCDコンサルティングへ

JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。

当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修で、合計7度ファシリテーターを務めました。

JASTI監査に向けたコンサルティングは、私どもHCDコンサルティングにお任せください。