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JASTI 6-12 遵守の証拠

JASTI 6-12 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。

JASTI 6-12 原文

工場は、工場所在地の法令に従い、従業員に休日を与えなくてはならな い。休日に就業する場合は、工場所在地の法令に従い、代休などを与えな ければならない。 注:日本においては、代休の付与は義務ではない。

達成すべきコミットメント

「私たちは、事業場所在地の法令に従い、労働者等に休日を与えます。休日に就業する場合は、事業場所在地の法令に従い、必要であれば代休などを付与します。」

補足説明:法的根拠と国際人権

日本の国内法:労働基準法第35条が「週1回または4週4日」の法定休日を義務付けています。休日労働には36協定の届出と割増賃金(35%以上)が必要です。

国際人権基準:世界人権宣言第24条は「休息及び余暇の権利」を保障しており、企業の休日管理は労働者の基本的な権利を守るための重要な責務です。

遵守を裏付ける証拠をカテゴリー別に整理

1. 就業規則への休日規定

法定休日と所定休日を明確に区別し、休日労働や代休・振替休日のルールを就業規則に定めます。

遵守を示す証拠 (例):
  • 法定休日を特定した就業規則の条文。
  • 振替休日および代休制度に関する規定。
  • 従業員への就業規則の周知を証明する記録。

2. 休日労働の適法な手続き

法定休日に労働させる場合、36協定を適正に締結・届出し、その範囲内で運用します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 労働基準監督署の受付印がある有効な36協定の写し。
  • 休日労働の事前申請・承認プロセスに関する記録。

3. 客観的な休日取得記録

従業員の休日取得状況を、勤怠管理システム等を用いて客観的に記録し、法定休日が確保されていることを確認します。

遵守を示す証拠 (例):
  • タイムカードや勤怠システムの記録。
  • 年間の勤務カレンダーやシフト表。
  • 週1回または4週4日の法定休日が確保されていることを示す勤怠データ。

4. 休日労働割増賃金の支払い

法定休日に労働した場合、35%以上の割増賃金を正確に計算し、支払います。

遵守を示す証拠 (例):
  • 休日労働時間と割増率(1.35以上)が明記された賃金台帳。
  • 休日労働手当の計算根拠がわかる給与明細書。

5. 振替休日の適正な運用

休日労働の「前」に代替の休日を特定し、従業員に通知することで、休日労働割増賃金の発生を回避します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 休日振替を事前に行ったことを示す通知書や勤務シフト表。
  • 週の労働時間が40時間を超えた場合の、時間外割増賃金の支払記録。

6. 代休の適切な管理

休日労働の「後」に代休を与える場合でも、法定休日の労働に対する割増賃金(35%以上)は別途支払います。

遵守を示す証拠 (例):
  • 代休の付与・取得状況を管理する台帳やシステム記録。
  • 代休取得に関わらず、休日労働割増賃金を支払ったことを示す給与明細。

7. 管理職への教育と周知

管理職が休日・代休・振替休日の違いと法的な要件を正しく理解し、適切に運用できるよう教育します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 休日・休暇管理に関する管理職向け研修の実施記録。
  • 運用ルールをまとめたマニュアルやガイドライン。

8. 苦情処理メカニズム

休日取得や割増賃金の支払いに関する懸念を、従業員が安心して申し出られる窓口を設けます。

遵守を示す証拠 (例):
  • 相談窓口の周知記録。
  • 休日関連の相談・苦情とその対応・解決記録(匿名化)。

9. 監査と継続的改善

休日管理と割増賃金支払いの実態を定期的に監査し、問題点を是正することで、継続的なコンプライアンスを確保します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 内部監査報告書。
  • 是正措置計画と完了報告。
  • 休日労働時間や代休未取得状況に関するKPIと実績データ。

結論:労働者の休息権を守るための体系的アプローチ

休日の確保と休日労働への適正な対応は、法的義務であると同時に、労働者の健康と福祉を守り、持続可能な生産活動を支えるための基本です。明確な規程、客観的な記録、正しい賃金計算、そして代休・振替休日の適切な運用を組み合わせた体系的な管理体制を構築し、その実態を具体的な証拠で示すことが、企業の信頼性と社会的責任を証明する鍵となります。

重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。

JASTI監査対策のご相談は、私どもHCDコンサルティングへ

JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。

当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修で、合計7度ファシリテーターを務めました。

JASTI監査に向けたコンサルティングは、私どもHCDコンサルティングにお任せください。