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JASTI 2-1 遵守の証拠

JASTI 2-1 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。

重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。

JASTI 2-1 原文

工場は、工場所在地の法令で定める就労最低年齢に満たない労働者を雇用してはならない。また、児童労働を行わない旨、及び是正措置、予防措置を含む方針を定めなくてはならない。

達成すべきコミットメント

「私たちは、事業場所在地の法令で定める就労最低年齢に満たない労働者を雇用しません。また、児童労働を行わない旨、及び是正措置、予防措置を含む方針を定めます。」

補足説明:法的根拠と国際基準

日本の国内法:労働基準法(就労最低年齢、年少者保護規定、年齢証明義務など)。

国際労働基準(ILO条約):ILO第138号条約(就業最低年齢)、ILO第182号条約(最悪の形態の児童労働)など。日本はこれらの主要条約を批准しています。

企業は、国内法を遵守するだけでなく、より高い基準を定める国際基準の精神も尊重し、方針に反映させることが求められます。

コミットメント達成の意義

このコミットメントの達成は、企業の倫理的責任を果たす上で不可欠であり、法的リスクの回避、社会からの信頼獲得、そして持続可能な事業運営の基盤構築に繋がります。特に児童の権利保護は国際的な要請です。

遵守を裏付ける証拠をカテゴリ別に整理

1. 方針の策定と文書化

児童労働防止に関する明確な方針を策定し、文書化します。国際基準(ILO条約等)への準拠を明記します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 児童労働防止方針文書(最低就労年齢、禁止事項、予防・是正措置、適用範囲、責任体制を明記)。
  • 方針策定プロセスの記録(関連部署協議、専門家助言など)。
  • 経営トップ(取締役会等)による方針の承認・支持を示す文書(署名、議事録)。
  • 方針の改訂履歴(バージョン管理)。

2. 方針の伝達と浸透

策定した方針を組織内外の関係者に効果的に伝達し、理解と遵守を促します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 全従業員への周知記録(社内通知、イントラネット掲載、ハンドブック)。
  • 新規採用者オリエンテーション資料。
  • サプライヤー、請負業者への伝達記録(行動規範、契約条項)。
  • 企業ウェブサイト、CSR報告書等での方針公開。

3. 採用時の厳格な年齢確認

採用プロセスにおいて、全ての応募者の年齢を公的書類(戸籍証明書、住民票等)で確認し、記録します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 年齢確認手順を明記した採用・雇用手続きマニュアル。
  • 採用時チェックリスト(年齢確認項目必須)。
  • 収集した公的な年齢証明書類のコピー(年少者のサンプル、匿名化)。
  • 人事・採用担当者向け年齢確認研修の資料・記録。
  • 15歳未満の児童を例外的に雇用する場合の労働基準監督署の許可書。

4. 正確な記録管理と年少者保護

従業員の年齢情報を正確に記録・管理し、特に年少者(18歳未満)の就労条件(労働時間、危険有害業務の禁止等)を遵守します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 全従業員の生年月日を含む従業員データベースの記録(匿名化)。
  • 年齢証明書類の保管方針と保管記録(匿名化された個人ファイル抜粋)。
  • 年少者の労働時間管理記録、業務割り当て記録。
  • 年少者の危険有害業務への非従事、禁止機械への警告表示の写真。

5. リスク評価と予防措置

自社事業やサプライチェーンにおける児童労働リスクを特定・評価し、予防するための措置を積極的に講じます。

遵守を示す証拠 (例):
  • 文書化されたリスク評価方法論とリスク評価報告書(ヒートマップ等)。
  • 高リスク領域(地域、産業、供給業者等)の特定と対応策の記録。
  • (サプライチェーン対象の場合)サプライヤー行動規範、SAQ、監査計画・報告書。
  • 業界イニシアチブへの参加記録。

6. 研修と意識向上

従業員、管理職、調達担当者等に対し、児童労働防止に関する方針、法的要件、リスク認識、報告手順等について定期的な研修を実施します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 研修資料(eラーニングモジュール、ハンドブック等)。
  • 研修スケジュール、出席者リスト、理解度テスト結果。
  • サプライヤー向け研修の実施記録(該当する場合)。
  • 方針伝達のためのコミュニケーション資料(ポスター等)。

7. 苦情処理と是正措置(救済)

児童労働に関する懸念を報告できる、安全でアクセスしやすい苦情処理メカニズムを確立・運用し、発見時は「子どもの最善の利益」を考慮した是正措置を講じます。

遵守を示す証拠 (例):
  • 文書化された苦情処理手順(報告方法、調査、守秘義務、報復禁止)。
  • 苦情処理メカニズムの周知資料(多言語対応)。
  • 苦情受付・調査・解決の匿名化ログ。
  • 是正措置方針(危険な労働からの即時引き離し、教育機会確保、家族支援等)。
  • 過去の是正措置の記録(匿名化、就学証明、フォローアップ報告)。

8. 監視・レビューと継続的改善

方針の遵守状況を定期的に監視・監査し、その結果や外部情報を基に継続的な改善を図ります。

遵守を示す証拠 (例):
  • 内部監査計画・報告書、フォローアップ措置の記録。
  • 経営層レビュー会議の議事録(児童労働リスク、方針有効性等を議論)。
  • 関連KPIの追跡記録(研修受講率、監査数、苦情件数・解決率等)。
  • 外部監査報告書(該当する場合)。
  • CSR報告書、現代奴隷法声明等での公的報告。

持続的なコミットメントと人権尊重文化の醸成

児童労働防止のコミットメント達成には、明確な方針、関係者への周知と教育、厳格な年齢確認、リスクに基づいた予防策、実効性のある苦情処理・是正措置、そして継続的な監視と改善サイクルが不可欠です。

企業は、これらの証拠カテゴリーを参考に自社の取り組みを評価し、子どもの権利を真に尊重し、サプライチェーン全体での児童労働撤廃に向けた努力を継続することが求められます。

JASTI監査対策のご相談は、私どもHCDコンサルティングへ

JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。

当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修で、合計7度ファシリテーターを務めました。

JASTI監査に向けたコンサルティングは、私どもHCDコンサルティングにお任せください。