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JASTI 2-2 遵守の証拠

JASTI 2-2 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。

重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。

JASTI 2-2 原文

⼯場は、従業員の採⽤に際し、公的証書によって年齢を確認しなくてはならない。

達成すべきコミットメント

「私たちは、労働者等の採用または事業場における勤務開始に際し、公的証書によって年齢を確認します。」

補足説明:法的根拠と国際基準

日本の国内法:労働基準法(第56条 最低就労年齢、第57条 年少者の年齢証明、第109条 記録の保存義務)、個人情報保護法。

国際労働基準(ILO条約):ILO第138号条約(就業最低年齢)、ILO第182号条約(最悪の形態の児童労働)。日本はこれらの主要条約を批准しています。

企業は、国内法を遵守するだけでなく、国際人権基準の精神も尊重し、実効性のある年齢確認体制を構築・維持することが求められます。

コミットメント達成の意義

このコミットメントの達成は、法的義務の遵守はもとより、児童労働防止という国際的な人権課題への対応、従業員、顧客、投資家、社会全体からの信頼構築に不可欠です。年少者の保護と公正な雇用慣行の基盤となります。

遵守を裏付ける証拠をカテゴリ別に整理

1. 方針と手順の文書化

年齢確認に関する明確な社内方針と、それを実行するための具体的な手順を文書化します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 年齢確認に関する正式な企業方針文書(法的要件、ILO条約への言及を含む)。
  • 採用担当者向け標準作業手順書(SOP)。
  • 認められる公的証明書の種類リスト。
  • 方針の周知徹底に関する記録(社内通達等)。

2. 公的証明書による年齢確認

全従業員(成人含む)に対し、採用時または業務開始時に公的証明書で年齢を確認します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 従業員ファイルに保管された年齢確認書類の写し(運転免許証、マイナンバーカード表面等、匿名化サンプル)。
  • 年齢確認実施記録ログ(確認日、確認者、確認書類種別)。

3. 年少者の追加的確認・記録

18歳未満の年少者については、労働基準法に基づき特に厳格な確認と記録を行います。

遵守を示す証拠 (例):
  • 戸籍証明書または住民票記載事項証明書の写し(事業場備え付け、匿名化サンプル)。
  • 15歳未満の児童を雇用する場合の学校長の証明書、親権者の同意書、労基署長の許可書。
  • 労働者名簿への正確な生年月日記載。

4. 採用プロセスの記録

採用プロセスに年齢確認ステップを組み込み、その実施を記録します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 採用・入社時チェックリスト(年齢確認項目を含む)。
  • 記入済みチェックリスト(人事担当者の署名・承認付き、匿名化サンプル)。

5. 文書の適正な取扱と保管

収集した年齢確認書類(個人情報)を、労働基準法および個人情報保護法に基づき適正に取り扱い、保管・廃棄します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 文書保管・廃棄に関する社内規定。
  • 安全な保管措置の記録(施錠キャビネット、アクセス制御システム等)。
  • 保存期間満了後の廃棄記録(シュレッダーログ、データ消去証明書)。
  • 不採用者の書類返却・廃棄記録。

6. 担当者への研修

人事・採用担当者に対し、年齢確認に関する法的要件、社内手順、個人情報保護について定期的な研修を実施します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 研修資料(法的要件、手順、証明書真正性確認の基礎等)。
  • 研修受講記録(出席者リスト、修了証明)。

7. システム記録と監査

デジタルシステム(HRIS等)を使用する場合、年齢確認の実施状況に関するログや監査証跡を保持します。

遵守を示す証拠 (例):
  • HRIS/ATSからのシステム生成レポート。
  • 監査ログ(誰がいつ確認を完了したか)。
  • 定期的な内部監査計画・報告書。

8. 文書真正性確認の努力

提出された年齢確認書類の真正性について、可能な範囲で確認努力を行います。

遵守を示す証拠 (例):
  • 人事担当者向け研修資料内の真正性確認ポイント。
  • 目視確認手順の文書化。
  • 疑義が生じた場合の対応プロセスの記録。

持続的なコミットメントと人権尊重文化の醸成

年齢確認コミットメントの遵守を実証するには、明確な方針、担当者への研修、公的証明書による確実な確認と記録、そしてそれらの文書の適正な管理が不可欠です。

これらの証拠カテゴリーを参考に、企業は自社の年齢確認プロセスを強化し、国内法および国際基準を遵守することで、児童労働の防止と若年労働者の保護に貢献し、社会からの信頼を得ることが求められます。

JASTI監査対策のご相談は、私どもHCDコンサルティングへ

JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。

当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修で、合計7度ファシリテーターを務めました。

JASTI監査に向けたコンサルティングは、私どもHCDコンサルティングにお任せください。