JASTI 2-4-1の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。
重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。
JASTI 2-4-1 原文
⼯場は、18 歳未満の未成年を採⽤する際、⼯場所在地の法令で規定がある場合、規定に従って⼿続き等を⾏わなくてはならない。
JASTI 2.4.1 未成年者雇用遵守証明の具体例
達成すべきコミットメント
「私たちは、18歳未満の未成年を採用する際、事業場所在地の法令で規定がある場合、規定に従って手続き等を行います。」
補足説明:法的根拠と国際基準
日本の国内法:労働基準法(第56条~第64条 年少者の保護、第109条 記録の保存義務)、個人情報保護法。
国際労働基準(ILO条約):ILO第138号条約(就業最低年齢)、ILO第182号条約(最悪の形態の児童労働)。日本はこれらの主要条約を批准しています。
企業は、国内法を遵守するだけでなく、国際人権基準の精神も尊重し、実効性のある未成年者雇用管理体制を構築・維持することが求められます。
コミットメント達成の意義
このコミットメントの達成は、法的義務の遵守、児童労働の防止、未成年者の健全な育成支援という社会的責任を果たす上で不可欠です。従業員、取引先、顧客、投資家、そして社会全体からの信頼を構築し、持続可能な事業運営の基盤となります。
遵守を裏付ける証拠をカテゴリ別に整理
1. 方針・手順の文書化と周知
未成年者雇用に関する明確な社内方針と、それを実行するための具体的な手順を文書化し、関係者に周知します。
- 未成年者雇用に関する企業方針文書(関連法令、ILO条約への言及を含む)。
- 採用担当者・管理者向け標準作業手順書(SOP)。
- 方針の周知徹底に関する記録(社内通達、研修記録等)。
2. 公的証明書による年齢確認
18歳未満の年少者について、採用時に公的証明書(住民票記載事項証明書等)により年齢を確認します。
- 住民票記載事項証明書または戸籍証明書(抄本・謄本)の写し(事業場備え付け、匿名化サンプル)。
- 年齢確認実施記録ログ(確認日、確認者、確認書類種別)。
3. 法的要件に応じた追加書類
児童(満15歳到達年度の3月31日以前)を雇用する場合など、法令で定められた追加書類を具備します。
- 親権者または後見人の同意書(事業場備え付け)。
- 修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書(必要な場合)。
- 労働基準監督署長の許可書(必要な場合)。
4. 未成年者本人との労働契約
労働契約は、親権者等ではなく、未成年者本人と直接締結します。
- 未成年者本人が署名した労働契約書(または労働条件通知書)。
- 契約内容を未成年者が理解できるよう説明した記録(任意)。
- (推奨)契約行為に対する親権者の同意書(別途または契約書に副署)。
5. 労働時間・休憩・深夜業管理
未成年者の労働時間、休憩、休日、深夜業に関する法的制限を遵守し、適切に管理します。
- 正確な勤怠記録(タイムカード、デジタルログ等)。
- 勤務シフト表(深夜業・時間外労働の禁止を反映)。
- 時間外労働・休日労働を行わせていないことを示す給与記録。
6. 危険有害業務への就業制限
法令で定められた危険有害業務に未成年者を従事させません。
- 職務記述書(禁止業務を除外)。
- 職場リスクアセスメント記録。
- 安全衛生教育の実施記録(禁止業務に関する注意喚起を含む)。
- 機械設備等への安全対策・表示。
7. 健康と安全の確保
未成年者の健康と安全に配慮した作業環境を整備し、必要な教育・指導を行います。
- 健康診断の実施記録(該当する場合)。
- 安全衛生教育、避難訓練等の実施記録。
- 保護具の支給・着用指導記録。
- 作業環境測定記録(必要な場合)。
- 未成年者への配慮(指導体制、相談窓口など)に関する記録。
8. 記録の適正な保管と管理
未成年者の雇用に関する各種書類を、法令に基づき適正に保管・管理します(労基法第109条:5年間保存)。
- 労働者名簿(未成年者については生年月日を記載)。
- 賃金台帳。
- 雇用契約書、年齢証明書、同意書等の関連書類。
- 文書保管・廃棄規定、アクセス管理記録。
9. 担当者への研修
採用担当者、管理者等に対し、未成年者雇用に関する法的要件、社内手順、人権配慮について研修を実施します。
- 研修資料(法的要件、社内規程、配慮事項等)。
- 研修受講記録(出席者リスト、理解度テスト結果等)。
- 定期的な研修実施計画。
10. 苦情処理メカニズム
未成年者が安心して相談・申告できる苦情処理メカニズムを整備し、適切に運用します。
- 苦情処理窓口の設置と周知(ポスター、説明会等)。
- 苦情対応手順の文書化(機密保持、報復禁止を含む)。
- 苦情受付・対応記録(匿名化された事例を含む)。
- 未成年者に配慮した相談しやすい工夫の記録。
持続的なコミットメントと人権尊重文化の醸成
未成年者雇用のコミットメント遵守を実証するには、明確な方針、担当者への研修、法令に基づいた確実な確認と記録、そしてそれらの文書の適正な管理が不可欠です。
これらの証拠カテゴリーを参考に、企業は自社の未成年者雇用管理プロセスを強化し、国内法および国際基準を遵守することで、未成年者の保護と健全な育成に貢献し、社会からの信頼を得ることが求められます。継続的な見直しと改善を通じて、人権を尊重する企業文化を醸成していくことが重要です。
JASTI監査対策のご相談は、私どもHCDコンサルティングへ
JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。
当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修)で、合計7度ファシリテーターを務めました。
JASTI監査に向けたコンサルティングは、私どもHCDコンサルティングにお任せください。