JASTI 2-4-2の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。
JASTI 2-4-2 原文
⼯場は、18 歳未満の未成年に対し、時間外労働・深夜労働をさせる場合は、⼯場所在地の法令の規定に従わなければならない。
JASTI 2.4.2 未成年者の時間外・深夜労働に関する証拠
達成すべきコミットメント
「私たちは、18歳未満の未成年者に対して時間外労働・深夜労働をさせる場合は、事業場所在地の法令の規定に従います。」
補足説明:法的根拠と国際基準
日本の国内法:労働基準法(第60条 時間外・休日労働の禁止、第61条 深夜業の禁止)、関連規則。
国際労働基準(ILO条約):ILO第138号条約(就業最低年齢)、ILO第79号条約(非工業的事業における夜業)、ILO第90号条約(工業的事業における夜業)、ILO第182号条約(最悪の形態の児童労働)。
企業は、国内法を厳守するとともに、国際人権基準の趣旨を尊重し、年少者を過度な労働から保護する体制を構築・維持する必要があります。
コミットメント達成の意義
このコミットメントの達成は、年少者の健康、安全、発達を保護し、教育の機会を確保するために不可欠です。法的リスクを回避し、企業の社会的評価を高め、持続可能な事業運営に貢献します。
遵守を裏付ける証拠をカテゴリ別に整理
1. 方針・ガバナンス文書
時間外・深夜労働の原則禁止と、例外規定の厳格な運用を明記した社内方針を整備・周知します。
- 年少者の時間外・深夜労働に関する社内方針書(労基法第60・61条、ILO条約への言及)。
- 行動規範、人権方針等への関連規定の組み込み。
- 方針の周知記録(研修、イントラネット掲載、署名確認等)。
2. 採用・オンボーディング
採用時に年齢確認を徹底し、労働条件通知書で時間外・深夜労働の禁止を明示します。
- 公的な年齢証明書(住民票記載事項証明書等)のコピー。
- 親権者同意書、学校長の証明書(必要な児童の場合)。
- 署名済みの労働条件通知書(時間外・深夜労働禁止を明記)。
3. 労働時間管理・給与記録
勤怠管理システム等で労働時間を正確に記録し、違法な時間外・深夜労働がないことを給与記録で裏付けます。
- タイムカード、勤怠管理システムのログ(始業・終業・休憩時間)。
- 年少者の時間外・深夜労働を防止するシステム設定やアラート機能の記録。
- 給与記録(違法な時間外・深夜手当の支払いがないことの確認)。
4. 法的例外の厳格な管理
深夜業の例外規定(労基法第61条)を適用する場合、法的要件をすべて満たしていることを文書で証明します。
- 労働基準監督署長の許可証(交替制事業、非常災害時等)。
- 交替制勤務の16歳以上の男性であることの証明(雇用契約、年齢証明)。
- 免除産業(農林水産等)であることの証明(職務記述書)。
- 例外適用のための内部承認記録、条件遵守の確認記録。
5. 研修・啓発プログラム
管理者・監督者、年少者本人及びその保護者に対し、関連法規や権利について研修・情報提供を行います。
- 管理者向け研修資料・受講記録。
- 年少者・保護者向け説明資料(リーフレット、ハンドブック等)。
- 相談窓口に関する情報提供の記録。
6. 内部統制・監査・苦情処理
定期的な内部監査、是正措置プロセス、アクセスしやすい苦情処理メカニズムを整備・運用します。
- 内部監査計画・報告書(年少者の労働時間に関する項目を含む)。
- 特定された不遵守事項に対する是正措置の記録。
- 苦情処理規定、周知記録、対応記録(匿名化)。
7. 記録保持システム
関連文書を法令(労基法第109条等)に基づき体系的に作成、維持、保管、検索できるシステムを構築します。
- 記録管理規定(保存期間、保管方法、アクセス権限等)。
- 関連文書の保管状況(物理的・電子的ファイリングシステム)。
- ILO条約に基づく年少者の氏名・年齢等の登録簿。
8. 継続的改善の取り組み
テクノロジー活用、方針・手順の定期見直し、研修強化など、継続的な改善努力の証拠を示します。
- 勤怠管理システム導入・改善記録。
- 方針・手順の改訂履歴、周知記録。
- 研修プログラムの更新記録、受講者フィードバック。
- 内部監査結果に基づく改善計画と実施状況。
持続的なコミットメントと人権尊重文化の醸成
年少者の時間外・深夜労働に関するコミットメント遵守を実証するには、明確な方針の整備、徹底した年齢確認と労働条件の明示、正確な労働時間管理、法的例外の厳格な運用、関係者への研修、そして実効性のある内部統制と記録保持体制が不可欠です。
これらの証拠カテゴリーを参考に、企業は法令遵守を超え、国際的な人権尊重の観点からも年少者保護の取り組みを強化し、社会からの信頼を確固たるものにすることが求められます。継続的な監視と改善を通じて、年少者の権利を最優先する企業文化を育むことが重要です。
重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。
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JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。
当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修)で、合計7度ファシリテーターを務めました。
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