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JASTI 3-5 遵守の証拠

JASTI 3-5 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。

JASTI 3-5 原文

工場は、従業員の採用に際し、男女の差別、根拠のない年齢制限、その他 宗教、政治的見解、国⺠的もしくは社会的出身による差別を行ってはなら ない。

達成すべきコミットメント

「私たちは、労働者の採用に際し、性別、根拠のない年齢制限、その他宗教、政治的見解、国民的もしくは社会的出身による差別を行いません。」

補足説明:法的根拠と原則

日本の国内法:男女雇用機会均等法(性別差別)、雇用対策法(年齢差別)、日本国憲法(法の下の平等)、労働組合法、関連する厚生労働省の指針。

国際原則:国際労働機関(ILO)条約(C111 差別)、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」。

企業は、国内法を遵守するだけでなく、国際的な人権基準と社会規範に照らして、あらゆる採用活動において公平性と無差別を徹底することが求められます。

コミットメント達成の意義

無差別な採用慣行は、より広範な人材プールへのアクセスを可能にし、多様で包括的な職場環境を育みます。これは、企業の評判を高め、法的遵守を保証するだけでなく、優秀な人材の獲得と維持、そして企業全体の生産性向上にも貢献します。

遵守を裏付ける証拠をカテゴリー別に整理

1. 機会均等・無差別ポリシー

採用において、性別、年齢、宗教、政治的見解、国民的/社会的出身に基づく差別を明示的に禁止するポリシーを確立し、周知します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 性別、年齢、宗教、政治的見解、国民的/社会的出身に基づく差別を明確に禁止するポリシー文書。
  • ポリシーが全ての従業員、特に採用プロセスに関与する従業員にどのように伝達されるかの記録。

2. 採用と広告

性別中立な表現を使用し、年齢制限を避け(例外を除く)、多様な候補者層にリーチする採用活動を行います。

遵守を示す証拠 (例):
  • 性別中立な表現を用いた求人広告の記録。
  • 多様な採用チャネル(プラットフォーム、アウトリーチ活動)の利用を示すレポート。
  • 雇用対策法の例外に基づいて年齢制限を適用する場合、その具体的な理由と法的要件の遵守を示す文書。

3. 応募・スクリーニング

職務に関連する情報に焦点を当て、差別的な質問を含まない標準化された応募フォームとスクリーニングプロセスを適用します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 職務関連情報に焦点を当て、差別的な質問を含まない標準応募フォームのコピー。
  • 氏名や性別などの個人情報を削除した匿名化された応募書類のスクリーニングプロセスの記録(実施されている場合)。
  • 各役割に使用した具体的で職務に関連する選考基準の文書化されたリスト。

4. 面接と選考

全ての候補者に対して一貫した構造化された面接を実施し、客観的な評価基準を適用します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 標準化された質問と評価ルーブリックを含む構造化された面接ガイド。
  • 公正で無差別な採用慣行に関する採用担当者および面接官向けのトレーニングセッション記録。
  • 面接官の性別やその他の特性の多様性を示す文書(該当する場合)。
  • 各候補者に対する面接官の客観的なフィードバックと評価記録。

5. 記録保持とデータ分析

応募者と採用に関するデータを体系的に収集・分析し、潜在的な差別や偏見を特定して対処します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 応募者の匿名化された人口統計データ(性別、年齢層など)。
  • 採用決定とその理由の記録(職務関連の資格に基づいていることを保証)。
  • 応募者と採用データの定期的な多様性レポート(格差や傾向の特定、是正措置の文書化)。

6. 定期的なトレーニング

採用担当者および人事担当者向けに、公正な採用慣行、無意識の偏見の認識、および無差別に関連する法的要件に関する定期的なトレーニングを実施します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 公正な採用慣行、無意識の偏見、および無差別に関連する法的要件に関するトレーニングプログラムの資料。
  • トレーニングプログラムへの従業員の参加記録(出席者名簿、修了記録)。

7. 年齢に基づく差別の制限

雇用対策法に基づき、原則として年齢制限を行わず、例外が適用される場合のみ、その理由を明確に文書化します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 職務記述書が年齢制限を指定せず、必要なスキル、経験、資格を強調していること。
  • 法的例外に基づいて年齢制限を適用する場合、その具体的な理由を明確に文書化した記録。
  • 年齢に基づく偏見や仮定を反映させない面接質問や評価基準。

8. 信条・出身による差別の禁止

宗教、政治的見解、国民的もしくは社会的出身による差別を行わず、公正な採用慣行を保証します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 採用プロセスにおいて、候補者のスキル、知識、職務関連経験の評価に厳密に焦点を当てること。
  • 応募または面接プロセス中に、候補者の宗教的信念、政治的所属、国籍、社会的背景について尋ねない方針と実践。
  • 採用担当者および面接官に対する、保護された特性に関連する偏見を避けるためのトレーニング記録。
  • 多様性と包容性を重視する職場文化を促進する社内コミュニケーション。

9. 継続的なモニタリングと改善

進化する法的基準とベストプラクティスを反映するために、採用慣行を定期的に見直し、更新するプロセスを確立します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 応募者の人口統計データ、採用決定データ、多様性レポートの定期的な分析。
  • 無意識の偏見または組織的な差別を示す可能性のある格差や傾向の特定と、是正措置の文書化。
  • 採用慣行を定期的に見直し、更新するための文書化されたプロセス。
  • 外部監査または第三者評価の結果と、それに基づく改善計画。

持続的なコミットメントと人権尊重文化の醸成

労働者採用における無差別原則のコミットメントを実証するためには、明確な方針、標準化されたプロセス、客観的な基準、そして定期的なモニタリングからなる、積極的かつ体系的なアプローチが不可欠です。これらの内部システムを継続的に見直し、改善することで、持続的なコンプライアンスと「具体的証拠」の即時的な利用可能性を確保することが推奨されます。

企業は、本報告書で提示された枠組みに基づき、定期的な自己監査を実施し、コンプライアンスを継続的に維持・改善していくことで、多様で包括的な労働力の構築に貢献し、社会からの信頼を得ることが求められます。

重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。

JASTI監査対策のご相談は、私どもHCDコンサルティングへ

JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。

当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修で、合計7度ファシリテーターを務めました。

JASTI監査に向けたコンサルティングは、私どもHCDコンサルティングにお任せください。