JASTI 3-8 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。
JASTI 3-8 原文
工場は、全ての従業員が公平に昇進、昇格、昇給の機会を得られる評価基 準を設け、性別や人種による格差を設けてはならない。これらの評価は、 従業員の資格、適性、技能能力によってなされなければならない。
達成すべきコミットメント
「私たちは、全ての従業員が公平に昇進、昇格、昇給の機会を得られる評価基準を設け、評価は、従業員の資格、適性、技能能力によっておこないます。私たちは、性別や人種による格差は設けません。」
補足説明:法的根拠と原則
国際労働基準:ILO第111号条約(差別(雇用及び職業)待遇に関する条約)。
日本の国内法:男女雇用機会均等法、雇用対策法、日本国憲法(法の下の平等)など。
企業は、意図的であるか否かにかかわらず、あらゆる形態の差別を撤廃し、雇用における機会と待遇の平等を促進することが求められます。これには、採用だけでなく、職業指導、訓練、昇進、労働条件のすべての段階が含まれます。
コミットメント達成の意義
雇用における差別の撤廃は、社会正義と経済発展に不可欠です。差別と闘い、仕事の世界における平等を促進することは、労働者の権利を擁護し、持続可能な開発目標8(ディーセント・ワークと経済成長)および目標10(不平等の是正)の達成に貢献します。
遵守を裏付ける証拠をカテゴリー別に整理
1. 包括的な国家立法
ILO第111号条約に列挙されたすべての根拠に基づいて差別を明示的に禁止する法律の存在を示します。
- 採用、雇用、労働条件、昇進、訓練、解雇など、雇用のあらゆる側面を網羅する法律の存在。
- 日本の男女雇用機会均等法および雇用対策法への準拠に関する文書。
- 法律が包括的であり、禁止されているすべての根拠と雇用のすべての段階を網羅していることの証明。
2. 国家政策および行動計画
雇用における平等を達成し、差別を撤廃するための明確な目的、目標、タイムラインを備えた国家政策および戦略の開発と実施を示します。
- 使用者団体および労働者団体と協議して策定された国家政策および戦略の文書。
- 政策が体系的に取り組むための高レベルのコミットメントを示していること。
- 政府のさまざまな部門およびレベルにわたる調整されたアプローチを保証するための明確なロードマップ。
3. 統計データとモニタリング
労働市場への参加、雇用率、賃金、および職業分布に関する分解されたデータの体系的な収集と分析を示します。
- 性別、人種、民族、宗教などによる労働市場参加、雇用率、賃金、職業分布に関する分解されたデータの収集・分析記録。
- 格差を縮小し、平等を達成する進捗状況を定期的にモニタリングおよび評価するためのメカニズムの確立。
- 不平等を測定し、時間の経過に伴う変化を追跡し、証拠に基づいた政策立案の基礎を提供する定量的データ。
4. 苦情処理と法的救済
差別事件を報告するためのアクセス可能で、公平で、機密性の高い手順の確立と、効果的な法的救済の利用可能性を示します。
- アクセス可能で、公平で、機密性の高い報告手順に関する文書。
- 差別加害者に対する補償、復職、および制裁を含む、効果的な法的救済の利用可能性を示す記録。
- 差別被害者が救済の道を持っていることを保証する堅牢な苦情処理メカニズムの存在。
5. 労働監督官および執行機関の役割
反差別法の遵守を確保するための労働監督官による職場のアクティブかつ効果的なモニタリングと、執行機関の権限を示します。
- 労働監督官による職場のアクティブかつ効果的なモニタリングに関する記録。
- 差別的な慣行を調査し、制裁する執行機関の権限に関する文書。
- 反差別法が積極的に実施されることを保証するための強力な執行システム。
6. 三者協議と社会対話
反差別政策および慣行の開発、実施、およびモニタリングにおける、代表的な使用者団体および労働者団体との継続的な協議および協力を示します。
- 使用者団体および労働者団体との継続的な連携に関する記録。
- 団体交渉協定における無差別条項の包含に関する文書。
- 使用者と労働者の両方の視点が考慮されることを保証するための社会対話の実施。
7. 公衆の意識向上と教育イニシアチブ
雇用主、労働者、および一般の人々に対し、平等と無差別の重要性、および差別的慣行を禁止する法律について教育するための公衆意識向上キャンペーンの実施を示します。
- 平等と無差別を促進する公衆キャンペーンと教育プログラムの記録。
- 教育カリキュラムおよび職業訓練プログラムへの無差別原則の統合。
- 差別的な態度や行動に挑戦するための継続的な努力。
8. ILO監督機関への報告
ILO憲章第22条に基づき、第111号条約を実施するために取られた措置に関する報告書のILOへの定期的な提出を示します。
- 第111号条約の実施に関するILOへの定期的な報告書の写し。
- ILO条約勧告適用専門家委員会(CEACR)との連携、およびその意見や勧告に対処するための措置の実施記録。
- 説明責任と国際的な監視へのコミットメント。
9. 判例と司法判断
雇用における平等と無差別の原則を支持する判例の体系を備えた、国内の裁判所および法廷による反差別法の着実な適用を示します。
- 国内の裁判所および法廷による反差別法の着実な適用を示す判例の体系。
- 反差別法が実際にどのように解釈され、適用されるかの具体的な例。
- 法的枠組みを強化し、雇用主と従業員に明確さを提供するための強力で一貫した判例の体系。
10. 脆弱なグループのための特別な措置
特定のグループ(例えば、女性、少数民族、障害者)に対する歴史的および構造的な差別に対処するための的を絞った措置の実施を示します。
- アファーマティブ・アクションまたはポジティブ・ディスクリミネーション政策などの的を絞った措置の実施。
- 雇用における機会均等を確保するための障害者のための合理的配慮の提供。
- 競争条件を公平にし、真の平等を促進するための積極的かつ的を絞った介入。
持続的なコミットメントと人権尊重文化の醸成
雇用差別の撤廃は、包括的な法的枠組み、効果的な国家政策、堅牢な執行メカニズム、意味のある社会対話、および平等への社会的なコミットメントを含む多面的なアプローチを必要とします。これを達成し、実証することは継続的なプロセスであり、進化する社会規範と新たな差別の形態に対応して、継続的なモニタリング、評価、および適応が必要です。
企業は、本報告書で提示された枠組みに基づき、定期的な自己監査を実施し、コンプライアンスを継続的に維持・改善していくことで、雇用差別の撤廃に貢献し、すべての人々にとってディーセント・ワークと、より公正で公平な世界を築くことが求められます。
重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。
JASTI監査対策のご相談は、私どもHCDコンサルティングへ
JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。
当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修)で、合計7度ファシリテーターを務めました。
JASTI監査に向けたコンサルティングは、私どもHCDコンサルティングにお任せください。