JASTI 5-17-1の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。
JASTI 5-17-1 原文
工場は、工場所在地の法令に従い、工場内の照度を基準以上に維持しなけ ればならない。法令の定めがない場合、「一般的な事務作業」においては 300 ルクス以上、「付随的な事務作業」及び倉庫エリアは 150 ルクス以上、「生産工程」では可能な限り 500 ルクス以上に維持しなければならない。
達成すべきコミットメント (JASTI 5.17.1)
「私たちは、事業場所在地の法令に従い、工場内の照度を基準以上に維持します。法令の定めがない場合、「一般的な事務作業」においては 300 ルクス以上、「付随的な事務作業」及び倉庫エリアは 150 ルクス以上、「生産工程」では可能な限り 500 ルクス以上に維持します。」
補足説明:法的根拠と国際基準
日本の国内法:労働安全衛生規則が、作業内容に応じた最低照度基準(例:精密作業300ルクス、普通作業150ルクス)を定めています。
業界標準:JIS Z 9110(照明基準総則)は、より詳細な推奨値を示し、ベストプラクティスとされています。
このコミットメントは、法定基準を遵守し、さらに高い自主基準(生産工程500ルクス以上等)を設定することで、労働災害防止と生産性向上を目指す企業の積極的な姿勢を示すものです。
遵守を裏付ける証拠をカテゴリー別に整理
1. 方針と照度管理基準
照度管理が、組織的な方針と明確な基準に基づいて行われていることを示します。
- 照度管理に関する社内規程やマニュアル。
- 作業区分ごとの照度基準(法定基準+自主基準)を定めた文書。
- 快適な職場環境形成に関する方針書。
2. 作業環境測定計画
照度測定が、場当たり的でなく、計画的に実施されていることを証明します。
- 年間の作業環境測定計画書。
- 測定頻度(年1回以上など)と測定対象エリアを定めた文書。
- レイアウト変更や設備更新時の臨時測定に関するルール。
3. 測定結果報告書
照度が法令および自主基準を満たしていることを示す、最も直接的で決定的な証拠です。
- 専門機関または有資格者による「作業環境測定結果報告書」。
- 各エリアの測定値と、法定・自主基準との比較評価。
- 使用した測定機器の情報(校正記録など)。
4. 測定地点マップ
測定データと実際の作業場所を視覚的に結びつけ、網羅的な測定を証明します。
- 工場レイアウト図上に測定地点をプロットしたマップ。
- 作業区分(事務、倉庫、生産等)を色分けした図面。
- 各測定点の測定値をマップ上に併記した資料。
5. 照明設備の管理と保守
照度を維持するための、予防的なメンテナンス活動を証明します。
- 全照明器具のリスト(種類、型番、設置場所等)。
- 定期的な清掃スケジュールと実施記録。
- 電球やLEDユニットの交換、故障修理の履歴。
6. 是正措置
問題を発見し、計画的に改善するPDCAサイクルが機能していることを示します。
- 測定結果に基づく内部報告書と改善計画書。
- 照明器具の増設や交換に関する作業指示書や購入記録。
- 改善後の再測定による効果検証の記録。
7. リスクアセスメントとの連携
照度管理が、より広範な労働安全衛生リスク管理の一部であることを示します。
- リスクアセスメント記録に、照度不足による健康・安全リスク(眼精疲労、転倒等)が特定されていること。
- 適切な照度の維持をリスク低減措置として位置づけた文書。
8. 安全衛生委員会での審議
照度管理が、労働者の参加を得て、組織的に議論・決定されていることを示します。
- 安全衛生委員会の議事録(3年間保存)。
- 議事録に、照度測定結果の報告や改善計画の審議が記載されていること。
- 労働者代表からの「暗くて作業しづらい」等の意見と、それに対する対応記録。
9. 教育と情報提供
労働者が照度の重要性を理解し、問題発見時に報告できる体制を整えます。
- 安全衛生教育の記録(照度の重要性に関する項目を含む)。
- 照度に関する問題(ちらつき、暗さ等)の報告手順の周知記録。
- 委員会での決定事項の社内掲示や回覧記録。
10. 担当者の力量
照度管理に関わる担当者が、適切な知識とスキルを持っていることを示します。
- 測定担当者の研修受講記録や資格証明書(作業環境測定士等)。
- 照明設備の設計・保守担当者の実務経験や資格の記録。
- ISO 45001の「力量」に関する要求事項への対応記録。
11. 内部監査
照度管理プロセスが有効に機能しているかを、自主的に検証します。
- 内部監査報告書(照度管理に関する評価項目を含む)。
- 監査での指摘事項に対する是正措置計画と完了報告。
- 前回監査からの改善状況のフォローアップ記録。
12. 経営層レビュー
照度管理を含む安全衛生が、経営の重要課題として認識されていることを示します。
- マネジメントレビューの議事録。
- 議事録に、照度管理のパフォーマンス評価や改善に関する議論が含まれていること。
- 照度改善のための予算承認など、経営層の決定事項。
明るい職場が照らす、安全と生産性の未来
適切な照度の維持は、労働災害を防止し、労働者の心身の健康を守るための基本的な要件です。このコミットメントの達成は、単に測定結果を示すだけでなく、計画、実施、評価、改善というPDCAサイクルが機能していることを証明することが重要です。
本インフォグラフィックで示した体系的な証拠ポートフォリオは、企業が法令遵守を超え、JIS規格なども参考にしながら、より高いレベルの快適で安全な職場環境を積極的に追求していることの力強い証明となります。
重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。
JASTI監査対策のご相談は、私どもHCDコンサルティングへ
JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。
当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修)で、合計7度ファシリテーターを務めました。
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