JASTI 5-2 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。
JASTI 5-2 原文
⼯場は、⼯場所在地の法令に従い、労働者の健康と安全衛⽣に関する社内規則を有し、これに合致した運⽤・管理を実施しなくてはならない。
達成すべきコミットメント
「私たちは、事業場所在地の法令に従い、労働者の健康と安全衛生に関する社内規則を有し、これに合致した運用・管理を実施します。」
補足説明:法令遵守と国際基準
国内法:労働安全衛生法(安衛法)は、事業者が遵守すべき安全衛生管理体制や措置に関する最低基準を定めています。
国際基準:ISO 45001などの国際的な労働安全衛生マネジメントシステムは、法令遵守を基盤としつつ、継続的な改善(PDCA)サイクルを通じて、より高いレベルの安全衛生を目指すための枠組みを提供します。
コミットメント達成の意義
法令を遵守し、実効性のある社内規則を運用することは、労働者の安全と健康を守るための基盤です。これにより、企業の社会的責任(CSR)を果たし、従業員、顧客、投資家からの信頼を獲得し、持続可能な事業運営を実現します。
遵守を裏付ける証拠をカテゴリー別に整理
1. 社内規則の制定と周知
企業の安全衛生管理の指針となる、実態に即した社内規則を文書化し、全従業員に伝えます。
- 労働安全衛生に関する「安全衛生管理規程」の文書。
- 規程の改訂履歴(定期的な見直しの証明)。
- 規程に関する研修会の実施記録や、イントラネットでの周知記録。
2. 法的遵守体制の構築
労働安全衛生法(安衛法)に基づき、必要な管理体制を整備します。
- 総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医等の選任辞令および届出記録。
- 安全衛生委員会の設置通知、委員名簿、運営規程。
3. リスクアセスメントと管理
職場の危険性や有害性を特定・評価し、リスクの低減措置を講じることで、災害を未然に防ぎます。
- リスクアセスメントの実施記録(特定したハザード、リスク評価、管理策を含む)。
- ヒヤリハット報告書、およびその分析と対策の記録。
- 安全装置の設置・点検記録、保護具の支給・使用記録。
4. 安全衛生教育と力量管理
労働者が安全に作業を行うために必要な知識と技能を習得し、維持することを確実にします。
- 法定教育(雇入れ時、特別教育等)の実施計画および実施記録。
- 訓練内容、出席者名簿、講師の記録。
- 従業員の理解度や技能を評価した記録(テスト、実技評価など)。
5. 労働者の協議と参加
安全衛生活動に労働者が関与することで、実効性を高め、安全文化を醸成します。
- 安全衛生委員会の議事録(労使双方の委員が出席し、実質的な討議が行われている)。
- 従業員からの安全に関する提案制度の記録と、それに対するフィードバック。
- リスクアセスメントや職場点検への労働者代表の参加記録。
6. 健康管理とウェルビーイング
労働者の心身の健康を維持・増進するための積極的な措置を講じます。
- 定期健康診断、ストレスチェックの実施記録と結果報告書の控え。
- 健診結果に基づく事後措置(医師の意見聴取、就業上の配慮)の記録。
- ストレスチェックの集団分析結果と、それに基づく職場環境改善の計画・実施記録。
7. インシデント対応と再発防止
発生した労働災害や事故を調査し、根本原因を特定して効果的な再発防止策を講じます。
- 労働者死傷病報告(労災の届出)の控え。
- 事故・インシデントの内部調査報告書(根本原因分析を含む)。
- 是正・予防措置(CAPA)計画と、その実施・効果検証の記録。
8. 継続的改善(PDCA)
安全衛生活動を計画・実行・評価・改善するサイクルを回し、システムを継続的に向上させます。
- 安全衛生に関する目標設定と、その達成状況を評価する記録。
- 内部監査計画、監査報告書、フォローアップの記録。
- 経営層によるマネジメントレビューの議事録と、そこでの決定事項。
9. 国際基準との整合性
国際的に認められたベストプラクティスを取り入れ、より高いレベルの安全衛生を目指します。
- ISO 45001の認証書、またはそれに準拠した労働安全衛生マニュアル。
- 国際基準の要求事項と自社のシステムを比較した内部監査報告書。
- 国際基準への取り組みに関する経営層の議論を示す議事録。
10. 外部への情報開示と評価
安全衛生活動の透明性を確保し、客観的な評価を受けることで信頼性を高めます。
- CSR/サステナビリティ報告書における安全衛生に関する記載。
- 休業災害度数率などのパフォーマンスデータの公開。
- 「安全衛生優良企業(ホワイトマーク)」などの外部認定の取得証。
包括的なコミットメントの証明と継続的強化
社内規則の遵守と有効な運用を証明することは、文書の整備だけでなく、リスク管理、教育、労働者参加、そして継続的な改善という一連の活動が機能していることを示すことです。
これらの証拠を体系的に管理し、PDCAサイクルを通じて常に改善し続けることが、法令遵守を超えた真の安全文化を築き、全てのステークホルダーからの信頼を獲得する鍵となります。
重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。
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JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。
当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修)で、合計7度ファシリテーターを務めました。
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