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JASTI 5-20 遵守の証拠

JASTI 5-20の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。

JASTI 5-20 原文

従業員に以下のような設備を使用及び管理させる場合には、工場所在地の 法令に従い、資格取得、トレーニングをさせなくてはならない。 (ボイラー、発電機、コンプレッサーの設備の点検、検査、及び操作する資 格、クレーンや車両系機械を運転する資格等)

達成すべきコミットメント

「私たちは、労働者等に、以下のような設備の使用及び管理をさせる場合には、事業場所在地の法令に従い、ボイラー、発電機、コンプレッサーの設備の点検、検査、及び操作する資格、クレーンや車両系機械を運転する資格等を取得させ、トレーニングをさせます。」

補足説明:法的根拠

労働安全衛生法:危険有害業務に従事する労働者の能力を担保するため、3階層の資格・教育制度を定めています。

  • 免許:クレーン(5t以上)等、特に危険な業務に必要な国家資格。
  • 技能講習:フォークリフト(1t以上)等、多くの機械操作に必要な公的資格。
  • 特別教育:低圧電気取扱いやアーク溶接等、特定の危険業務に従事させる際に事業者が実施を義務付けられる安全衛生教育。

コミットメント達成の意義

無資格・未教育者による危険な設備の操作は、重大な労働災害に直結します。法令で定められた資格取得とトレーニングを徹底することは、労働者の生命と健康を守り、企業の安全配慮義務を果たすための絶対的な要件です。これは、企業の信頼性と持続可能性の基盤となります。

遵守を裏付ける証拠をカテゴリー別に整理

1. 資格・免許の証明

労働者が、法令で要求される公的な資格を保有していることを直接的に証明します。

遵守を示す証拠 (例):
  • クレーン・デリック運転士免許証の写し。
  • ボイラー技士免許証の写し。
  • 電気主任技術者・電気工事士免状の写し。

2. 技能講習修了証

多くの機械操作に必須となる、公的な講習を修了したことを証明します。

遵守を示す証拠 (例):
  • フォークリフト運転技能講習修了証の写し。
  • 車両系建設機械運転技能講習修了証の写し。
  • 玉掛け技能講習修了証の写し。

3. 特別教育の実施記録

事業者が実施を義務付けられている、危険有害業務に関する安全衛生教育の記録です。

遵守を示す証拠 (例):
  • 低圧電気取扱業務特別教育の実施記録。
  • アーク溶接等特別教育のカリキュラムと教材。
  • 参加者リスト(署名付き)と修了証。
  • 記録の3年間保存の証明。

4. 作業手順書(SOP)と周知

設備を安全に使用・管理するための明確なルールが存在し、周知されていることを示します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 各設備の安全な操作手順、点検項目、緊急時対応を定めたSOP。
  • フォークリフト等の作業計画書。
  • SOPが作業場に掲示されている写真。

5. 設備点検・保守記録

設備の安全な「管理」には、適切な点検と保守が不可欠であることを証明します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 法令で定められた定期自主検査の記録(ボイラー、クレーン等)。
  • 外部業者による保守点検契約書と報告書。
  • 点検で発見された不具合の修理・改善記録。

6. リスクアセスメント記録

資格や教育の必要性が、具体的なリスク評価に基づいて決定されていることを示します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 各設備の危険有害性を特定したリスク評価シート。
  • リスク低減措置として、有資格者による操作や特別教育の実施を定めた記録。

7. 継続的な安全衛生教育

資格取得後も、安全意識と技能を維持・向上させるための取り組みを示します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 定期的な安全衛生教育の計画と実施記録。
  • 法改正や事故事例を反映した研修内容。
  • 管理者向けの安全監督研修の記録。

8. 安全衛生委員会議事録

労働者の意見を反映し、組織として資格管理や教育体制の改善に取り組んでいることを示します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 有資格者の配置や教育訓練計画に関する審議の議事録。
  • ヒヤリハット報告に基づき、訓練内容を見直した記録。

9. 外国人労働者への配慮

言語や文化の壁を越え、全ての労働者に安全が確保されていることを示します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 多言語対応の安全マニュアルやSOP。
  • 研修時の通訳者の利用記録。
  • 言語に応じた理解度確認テストの実施記録。

統合コンプライアンス・ポートフォリオの重要性

資格・トレーニングに関する遵守証明は、資格証の提示だけでは不十分です。資格の要否を判断したリスクアセスメント、日々の安全な作業を支える手順書、継続的な教育、そして設備の点検記録といった証拠が相互に連携して初めて、実効性のある安全管理体制が証明されます。

これらの証拠を体系的に管理・提示することで、企業が法令遵守はもちろん、労働者の力量を確保し、安全文化を醸成するための継続的な努力を行っていることを、説得力をもって示すことができます。

重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。

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JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。

当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修で、合計7度ファシリテーターを務めました。

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