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JASTI 5-3-2 遵守の証拠

JASTI 5-3-2 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。

JASTI 5-3-2 原文

工場は、階段に手すりを設置しなくてはならない。

達成すべきコミットメント

「私たちは、階段に手すりを設置します。」

補足説明:法的根拠

労働安全衛生法:労働者の安全と健康を確保するため、転倒・転落などの労働災害防止措置を事業者に義務付けています。

建築基準法:建物の最低基準を定め、階段の寸法や手すりの設置に関する要件を含みます。公的な検査の対象となります。

消防法:火災時の安全な避難経路の確保を目的とし、手すりは避難時の転倒を防ぐ重要な役割を担います。

コミットメント達成の意義

階段からの転倒・転落リスクを低減し、労働者の生命と健康を守ることは企業の基本的な責務です。手すりの設置は、安全な職場環境を維持し、緊急時の避難を助け、組織全体の安全文化を醸成するための具体的で重要な措置です。

遵守を裏付ける証拠ポートフォリオ

1. 設計・建築図面

手すりが設計段階から安全性を考慮して計画されていたことを証明します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 手すりの位置、構造、寸法が明記された最新の建築図面や工場レイアウト図。
  • 建築基準法施行令の基準(幅員、踏面、蹴上)への適合を示す図面。

2. 公的認証書類

建物が法令に適合していることを公的機関が認めた、最も信頼性の高い証拠です。

遵守を示す証拠 (例):
  • 建築基準法に基づく「建築確認済証」(設計の適合証明)。
  • 工事完了後に交付される「検査済証」(施工の適合証明)。
  • 事業附属寄宿舎規程に関する届出書・許可書。

3. リスクアセスメント

リスク評価に基づき、手すり設置を論理的に決定したプロセスを示します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 階段の転倒・転落リスク(例:濡れ、照明不足)の特定・評価記録。
  • リスク低減措置として手すり設置を選択した決定記録。
  • 設置後の残存リスクの評価記録。

4. 安全衛生委員会

労使が協力し、階段の安全性について継続的に協議・改善していることを示します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 階段の安全対策を議題とした議事録(月1回以上開催、3年間保存)。
  • ヒヤリハット報告のレビューと、それに基づく改善策の決定記録。

5. 点検と是正措置

手すりが常に安全な状態にあり、問題発生時に迅速に対応していることを証明します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 手すりのぐらつきや破損を確認する定期的な巡回点検記録(安全パトロール等)。
  • 不具合発見時の是正措置計画書と、修理・交換の完了報告書。
  • 保守・清掃スケジュールと実施記録。

6. 教育・訓練

従業員が手すりを安全に利用するための知識と意識を持っていることを示します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 雇入れ時・作業内容変更時の安全衛生教育の実施記録(3年間保存)。
  • 階段の安全な昇降方法、手すりの正しい利用法に関する研修資料と受講者名簿。

7. 緊急時への備え

火災等の緊急時に、手すりが避難経路の安全確保に有効に機能することを示します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 階段を避難経路として含む消防計画書や関連図面。
  • 避難訓練の実施記録(3年間保存)と、訓練結果のレビュー。
  • 避難経路上の非常灯や誘導灯の設置・点検記録。

8. 物理的証拠(写真)

実際の設置状況を視覚的に示し、文書記録の信憑性を補強します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 全階段への手すり設置状況がわかる日付入り写真。
  • 手すりの固定部や、障害物がないことを示す接写写真。
  • メジャーを当て、寸法が基準を満たしていることを示す写真。

動的コンプライアンスの継続的証明

手すりの設置は一度きりの行為ではありません。本インフォグラフィックで示された「静的コンプライアンス(設計・認証)」と「動的コンプライアンス(運用・改善)」の両方の証拠を体系的に維持・管理することが重要です。これにより、法令遵守はもちろん、労働者の安全と健康を守るための継続的な努力を、客観的かつ多角的に証明することができます。

重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。

JASTI監査対策のご相談は、私どもHCDコンサルティングへ

JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。

当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修で、合計7度ファシリテーターを務めました。

JASTI監査に向けたコンサルティングは、私どもHCDコンサルティングにお任せください。