JASTI 5-3-3 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。
JASTI 5-3-3 原文
工場は、倉庫や保管場所に十分な幅の通路(メインの避難通路は幅120cm 以上、ライン間の通路は80cm 以上)を確保し、働きやすい状態を維持しなくてはならない。
達成すべきコミットメント
「私たちは、倉庫や保管場所に十分な幅の通路(メインの避難通路は幅120cm以上、ライン間の通路は80cm以上)を確保し、働きやすい状態を維持します。」
補足説明:法的根拠
労働安全衛生規則:機械間通路幅(80cm以上)や、安全な通路を常時有効に保持する義務を定めています。
建築基準法:避難経路となる廊下の幅(例:1.2m以上)などを規定し、設計の基本となります。
消防法:火災時の避難に障害となる物品を通路に置かないなど、通路の維持管理を求めています。
コミットメント達成の意義
適切に確保・維持された通路は、物品の安全な運搬、従業員の円滑な移動、そして緊急時の迅速な避難を可能にします。これは、労働災害を防止し、生産性を向上させ、安全文化を醸成するための基本的な要素です。
遵守を裏付ける証拠ポートフォリオ
1. 設計図面とレイアウト
通路が設計段階から法令・社内基準に基づき計画されたことを証明します。
- 通路の位置、計画幅員が明記された最新の工場レイアウト図面。
- 避難経路や主要通路が色分け等で識別された設計図。
- 建築確認済証、検査済証。
2. 物理的証拠(写真)
計画された通路幅が、現場で実際に確保・維持されていることを視覚的に示します。
- メジャーを当てて通路幅を測定している日付入り写真。
- 通路標識(ライン表示、看板)が設置されている写真。
- 通路に障害物がない状態を示す写真。
3. 維持管理の記録
通路が常に安全で機能的な状態に保たれていることを継続的に証明します。
- 5S活動や安全パトロールのチェックリストと実施記録。
- 通路の障害物や床面の不具合に関する是正措置の記録。
- 避難経路図の掲示記録。
4. 適切な照明の確保
通路や作業場所の視認性を確保し、転倒やつまずき等のリスクを低減します。
- 作業環境測定(照度測定)の結果報告書。
- 測定地点を示したマップと、測定時の写真。
- 照度不足箇所に対する改善措置記録(照明追加等)。
- 照明設備の定期的な清掃・交換記録。
5. 安全な資材運搬
重量物運搬による身体的負担を軽減し、通路の効率的・安全な利用を促進します。
- フォークリフト、台車、クレーン等の運搬用設備のリスト。
- 設備の定期点検記録(特定自主検査記録票など)。
- 腰痛予防対策(運搬方法)に関する教育記録。
6. 教育と周知徹底
全従業員が通路の重要性を理解し、ルールを遵守するための知識を持つことを示します。
- 通路の安全利用、避難経路、5S活動に関する教育・訓練の実施記録。
- 「通路には物を置かない」等の社内ルールと、その周知記録。
- 訓練内容、テキスト、受講者名簿。
7. リスクアセスメント
通路に関する潜在的なリスクを体系的に評価し、管理していることを証明します。
- 通路での転倒、接触、資材の崩落等のリスクを評価した記録。
- 評価に基づく改善措置(床材変更、注意喚起表示等)の記録。
- 定期的なリスクの見直し記録。
8. 労使による協議
労使が協力して通路の安全性を定期的に確認・改善していることを示します。
- 安全衛生委員会で通路の安全性(障害物、照度等)を議題とした議事録。
- 従業員からの改善提案(ヒヤリハット報告等)と、それに対する対応記録。
動的コンプライアンスの継続的証明
安全な通路の確保は、一度きりの活動ではありません。本インフォグラフィックで示した「静的コンプライアンス(設計)」と「動的コンプライアンス(維持管理)」の両方の証拠を体系的に整備し、PDCAサイクルを通じて継続的に改善していくことが、真に「働きやすい状態」を実現する鍵となります。