JASTI 5-4-2 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。
JASTI 5-4-2 原文
工場は、工場所在地の法令に従い、重量物たとえば原反や裁断生地、梱包 された製品などを運搬するために、運搬用の設備を用意しなくてはならな い。
達成すべきコミットメント
「私たちは、事業場所在地の法令に従い、重量物たとえば原反や裁断生地、梱包された製品などを運搬するために、運搬用の設備を用意します。」
補足説明:法的・技術的背景
労働安全衛生法:事業者に労働者の健康障害防止措置を義務付けており、重量物運搬による腰痛リスクの低減もこれに含まれます。
職場における腰痛予防対策指針(厚生労働省):重量物の手作業運搬を減らすため、台車やフォークリフト等の「運搬用の設備」の利用を強く推奨しています。重量制限の目安も示されており、本コミットメントの直接的な根拠となります。
コミットメント達成の意義
重量物の不適切な運搬は、腰痛をはじめとする労働災害の主要な原因です。運搬設備を整備することは、労働者の身体的負担を軽減し、健康を守るだけでなく、作業効率の向上、ヒューマンエラーの削減にも繋がり、企業の生産性と安全文化の向上に貢献します。
遵守を裏付ける証拠ポートフォリオ
1. リスクアセスメント
重量物運搬のリスクを評価し、設備導入の必要性を客観的に判断します。
- 重量物運搬作業に関するリスクアセスメントの実施記録。
- 腰痛等のリスク評価と、それに基づく設備導入の決定記録。
- 定期的なリスク評価の見直し記録。
2. 運搬設備の整備と管理
作業に適した運搬設備を計画的に導入し、その全体像を把握します。
- 台車、フォークリフト、ホイスト等の設備目録(管理台帳)。
- 設備の購入・リース記録、仕様書。
- 設備が整備され、使用可能な状態にあることを示す写真。
3. 設備の点検と保守
全ての運搬設備が、常に安全で正常に機能することを保証します。
- フォークリフト等の特定自主検査記録票。
- 台車等の始業前(日常)点検チェックリスト。
- 外部専門業者による検査報告書。
- 不具合発見時の修繕・部品交換記録。
4. 安全作業手順書 (SOP)
安全な作業方法を明確に定め、全作業員がルールを理解し実践できるようにします。
- 各運搬設備の安全な使用手順書。
- 重量物運搬作業に関する作業標準。
- フォークリフト作業計画書。
- 手順書の周知・教育記録。
5. 教育訓練と資格
作業員が安全に作業を行うために必要な知識・技能・資格を有することを証明します。
- 運搬設備の安全使用に関する研修記録。
- 腰痛予防教育の実施記録。
- フォークリフト運転の特別教育・技能講習の修了証(写し)。
6. 作業環境の整備
設備が安全かつ効果的に使用できる、物理的な環境を維持します。
- 運搬経路が明示された作業場所のレイアウト図。
- 通路幅が確保され、障害物がない状態を示す写真。
- 荷姿の改善や重量表示の実施記録。
7. 労使による改善活動
現場の声を反映し、継続的に安全性を向上させる仕組みを示します。
- 安全衛生委員会で重量物運搬のリスクを議題とした議事録。
- ヒヤリハット報告や従業員からの改善提案と、それに対する対応記録。
- 内部安全パトロールの報告書と是正措置の記録。
8. 労働災害への対応
事故から学び、再発防止を徹底する体制が整っていることを証明します。
- 労働者死傷病報告書の控え。
- 労災事故の調査記録と根本原因の分析。
- 具体的な再発防止対策の計画と実施記録。
体系的な管理による腰痛予防
重量物運搬による腰痛予防は、単に設備を用意するだけでは達成できません。リスクアセスメントに基づき、適切な設備を導入し、安全な作業手順を定め、教育訓練を徹底し、作業環境を整備するという一連のプロセスを体系的に管理することが、真に安全で健康的な職場環境を実現する鍵となります。