JASTI 5-6-1 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。
JASTI 5-6-1 原文
工場は、工場所在地の法令に従い、避難訓練を実施しなくてはならない。 また、避難訓練の実施記録(日付、参加者、訓練の内容等)を保管しなく てはならない。
達成すべきコミットメント
「私たちは、事業場所在地の法令に従い、避難訓練を実施します。また、避難訓練の実施記録(日付、参加者、訓練の内容等)を保管します。」
補足説明:法的根拠
消防法:防火管理者の選任、消防計画の作成・届出、そして避難訓練の定期的な実施(例:特定防火対象物は年2回以上)を義務付けています。
消防法施行規則:訓練の実施記録を作成し、3年間保管することを定めています。
労働安全衛生法:緊急時対応計画の策定や、労働者への安全衛生教育の一環として、避難訓練の重要性が関連付けられます。
コミットメント達成の意義
火災や地震などの緊急時において、労働者の生命と安全を守るためには、日頃からの備えが不可欠です。定期的な避難訓練は、パニックを防ぎ、冷静かつ迅速な避難行動を可能にするための最も効果的な手段であり、企業の危機管理能力と安全文化のレベルを示す重要な指標です。
遵守を裏付ける証拠ポートフォリオ
1. 防火管理体制と計画
訓練が法令に基づき、計画的に実施されていることを示す根幹的な証拠です。
- 消防署に届け出た消防計画書の写し(受理印付)。
- 防火管理者選任(解任)届出書の写し。
- 訓練シナリオ、手順書。
2. 避難訓練の実施記録
訓練が実際に実施され、その内容が記録・保管されていることを証明します。
- 避難訓練実施記録(日付、内容、結果、課題等を記載)。
- 消防署への報告書の控え(受付印付)。
- 参加者の署名入り名簿(3年間保存)。
3. 訓練後のレビューと改善
訓練結果を評価し、継続的な改善(PDCA)に繋げていることを示します。
- 訓練後の反省会やレビューの議事録。
- 安全衛生委員会で訓練結果を議題とした議事録。
- 特定された問題点に対する是正措置計画と完了報告。
4. 避難経路の確保と表示
緊急時に誰もが安全かつ迅速に避難できる物理的環境を整備します。
- 「現在地」が明示された避難経路図の掲示写真。
- 通路に障害物がなく、十分な幅が確保されている写真。
- 避難口や通路を示す誘導灯や標識の写真。
5. 消防用設備の維持管理
初期消火や避難誘導に必要な設備が、常に正常に機能することを保証します。
- 消防用設備等点検結果報告書の控え(受理印付)。
- 消火器の配置図と、点検済票が貼られた現物の写真。
- 誘導灯や自動火災報知設備の点検記録。
6. 労働者への教育と周知
労働者が緊急時に取るべき行動を理解し、実践できることを示します。
- 緊急時対応に関する安全衛生教育の記録。
- 訓練計画の事前周知の記録(掲示物など)。
- 訓練後の理解度確認テストやアンケート結果。
7. 訓練の視覚的記録
訓練が形式的でなく、実効性のあるものとして実施されたことを補足します。
- 訓練風景(初期消火、通報、避難誘導など)の日付入り写真やビデオ。
- 参加者が真剣に取り組んでいる様子の記録。
8. 記録の一元管理
関連文書を体系的に管理し、いつでも追跡・検証できるようにします。
- 「防火管理維持台帳」としてファイリングされた文書群。
- 法定保存期間(3年)の遵守記録。
体系的な管理による実効性の確保
避難訓練の有効性は、個々の活動の寄せ集めでは確保できません。計画(Plan)、実施(Do)、評価(Check)、改善(Act)のPDCAサイクルを通じて、訓練を継続的に見直し、改善していくことが、真に機能する危機管理体制を構築する鍵となります。