JASTI 5-6-4 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。
JASTI 5-6-4 原文
火災報知器は、工場所在地の法令に従い、工場内及び社員寮に設置しなく てはならない。
達成すべきコミットメント
「私たちは、火災報知器を、事業場所在地の法令に従い、工場内及び社員寮に設置します。」
補足説明:法的根拠
消防法・消防法施行令:建物の用途と面積に応じて、自動火災報知設備の設置を義務付けています(例:工場は延べ面積500㎡以上、寮は300㎡以上)。また、防火管理者の選任や消防計画の作成も定めています。
消防法(改正):住宅(寮の個室を含む)の寝室や階段に住宅用火災警報器の設置を義務付けています。
コミットメント達成の意義
火災の被害は、発見の遅れによって爆発的に拡大します。適切に設置・維持された火災報知器は、火災を早期に検知し、警報を発することで、初期消火と迅速な避難を可能にします。これは、従業員の生命を守り、事業資産の損害を最小限に抑えるための最も基本的な安全設備です。
遵守を裏付ける証拠ポートフォリオ
1. 法定設置の公式証明
設備が法令基準に適合していることを、規制当局が公式に認めた「ゴールドスタンダード」の証拠です。
- 消防用設備等検査済証の原本または写し。
- 消防署が承認した、火災報知器の配置がわかる設備図面。
- 工事計画届出書・設置届出書の控え(受理印付)。
2. 法定点検と公式報告
設備の機能が、有資格者により定期的に点検・報告されていることを証明します。
- 消防用設備等点検結果報告書の控え(消防署の受理印があるもの)。
- 点検者(消防設備士等)の資格情報。
- 火災報知設備点検票など、詳細な点検記録。
3. 設置状況の物理的証拠
計画や記録が、現場で正しく実現されていることを視覚的に示します。
- 工場内に設置された感知器、発信機、受信機の日付入り写真。
- 寮の各寝室や階段に設置された住宅用火災警報器の写真。
- 点検済票(ラベル)が貼付された設備の写真。
4. 防火管理体制
火災予防に関する組織的な責任体制が確立されていることを示します。
- 防火管理者選任(解任)届出書の控え(受理印付)。
- 消防計画書の控え(受理印付)。
5. 是正措置と維持管理
点検で不備が発見された際に、速やかかつ適切に対応していることを示します。
- 点検結果に基づく改修計画書・完了報告書。
- 住宅用火災警報器の電池交換や清掃の記録。
- 内部安全パトロールでの確認記録。
6. 緊急時対応と訓練
警報作動時に従業員が適切に行動できるよう、計画と訓練を徹底します。
- 消防計画に記載された、警報作動時の対応手順。
- 避難訓練の実施記録(年2回以上など)。
- 従業員への安全衛生教育の記録。
7. 労使による改善活動
現場の声を反映し、組織全体で安全性を向上させる仕組みが機能していることを示します。
- 安全衛生委員会で火災報知器の管理状況を議題とした議事録。
- 訓練後のレビュー議事録と改善計画。
8. 記録の一元管理
関連文書を体系的に管理し、いつでも追跡・検証できるようにします。
- 「防火管理維持台帳」としてファイリングされた文書群。
- 法定保存期間(3年等)の遵守状況。
体系的な管理による火災安全の確保
火災報知器の設置は、計画、設置、点検、訓練、改善という一連のプロセスが一体となって初めて意味を持ちます。これらの活動を体系的に管理し、記録を残すことが、法令遵守を超え、真に信頼される安全な職場環境を構築する鍵となります。
重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。
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JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。
当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修)で、合計7度ファシリテーターを務めました。
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