投稿日

  カテゴリー:

,

  投稿者:

JASTI 5-7-3 遵守の証拠(法令上、工場に設置すべき避難口の数)

JASTI 5-7-3の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。

JASTI 5-7-3 原文

非常口は、工場所在地の法令に従い、非常口付近に可燃物がある場合など、必要な場合には、各フロアの離れた場所に最低 2 箇所以上設置しなくてはならない。

※ つまり、工場に設置すべき非常口の数に関する日本の法令を、きちんと守りなさいということです。

コミットメント達成の証拠:非常口の設置

達成すべきコミットメント

「私たちは、工場所在地の法令に従い、非常口付近に可燃物がある場合など、必要な場合には、非常口を各フロアの離れた場所に最低 2 箇所以上設置します。」

法的・倫理的枠組み

国内法遵守: 建築基準法・消防法が定める非常口の数、位置、避難経路の確保、および労働安全衛生法が課す「安全配慮義務」の履行が求められます。非常口付近の可燃物管理は消防法で厳しく制限されています。

国際人権の尊重: 労働者の「安全で健康的な労働環境」を求めるILOの中核的労働基準や、国連「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」に基づき、企業は従業員の生命と身体の安全に対する権利を保護する責任を負います。これは、国籍を問わず全ての従業員に適用されます。

遵守を裏付ける証拠のカテゴリー

1. 設計・計画の証拠

設計段階で法令に基づき複数の非常口が計画されたことを証明します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 建築設計図、各階平面図(非常口が2箇所以上、離れた位置にあることを明示)
  • 建築確認済証

2. 設置状況と視認性

設計通りに設置され、従業員が経路を認識できる状態であることを示します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 日付入りの現場写真・ビデオ(全非常口の位置関係がわかるもの)
  • 各階に掲示された避難経路図(「現在地」表示あり)の写真

3. 規定とリスク評価

可燃物等の危険を予防・管理するための組織的な体制を示します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 非常口・避難通路への物品設置を禁じる社内規定や手順書
  • 火災リスクアセスメントの記録(可燃物の特定と対策)

4. 日常的な監視と点検

ルールが形骸化せず、現場で遵守されていることを証明します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 安全パトロールのチェックリストと実施記録(写真付きが望ましい)
  • 非常口、誘導灯、消防設備の定期点検記録と是正報告書

5. 避難訓練

従業員が避難経路を実践的に理解し、その有効性を検証します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 定期的な避難訓練の計画書、実施報告書、参加者リスト
  • 訓練後のレビュー議事録(課題と改善策の記録)

6. 教育と情報提供

全従業員が必要な知識を持ち、情報にアクセスできることを示します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 従業員向け安全教育の記録(研修資料、出席者名簿)
  • 緊急時対応マニュアル
  • 多言語対応の掲示物やマニュアルの写真

7. 苦情処理メカニズム

従業員が安全上の懸念を報告し、それが改善に繋がる仕組みを示します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 匿名で報告できる苦情処理制度の方針と周知の記録
  • (匿名化された)苦情ログと、その調査・解決記録

8. 組織的なレビュー

労使が協力し、安全衛生課題を継続的に改善する体制を示します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 安全衛生委員会の議事録(非常口に関する議論や改善策の記録)
  • 従業員意識調査の結果と、それに基づく改善計画

9. 内部・外部監査

客観的な視点から安全管理体制の有効性が検証されていることを示します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)の内部監査報告書
  • SA8000やSMETA等の第三者による社会的監査報告書

10. 情報開示と透明性

企業の取り組みを外部に公開し、説明責任を果たしていることを示します。

遵守を示す証拠 (例):
  • サステナビリティ報告書や人権報告書での開示内容
  • 法改正に対応した社内規定の更新記録

結論:体系的な証拠による強力な実証

コミットメントの達成を証明するには、単に非常口が存在する事実だけでなく、その計画から設計、設置、日常管理、訓練、そして継続的な改善に至るまでの一連のプロセスが、国内法と国際人権基準の両方に準拠していることを体系的に示す必要があります。

ここに挙げた証拠を整備・提示することで、企業が労働者の生命と安全を最優先し、その権利を保護するために積極的かつ継続的な努力を行っていることを、説得力をもって実証することができます。

重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。

JASTI監査対策のご相談は、私どもHCDコンサルティングへ

JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。

当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修で、合計7度ファシリテーターを務めました。

JASTI監査に向けたコンサルティングは、私どもHCDコンサルティングにお任せください。