JASTI 6-1-1 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。
JASTI 6-1-1 原文
工場は工場所在地の法令に従い、有効な営業許可を取得し、就業規則を作 成し、行政官庁に届け出なければならない。また、就業規則の変更に際し ては労働代表者の意見を聴取しなければならない。 注:日本においては、従業員が常時 10 人未満の場合、就業規則の作成・届 出は義務ではないため、適用外。
達成すべきコミットメント
「私たちは、事業場所在地の法令に従い、有効な営業許可を取得し、就業規則を作成し、行政官庁に届け出ます。また、就業規則の変更に際しては労働代表者の意見を聴取します。」
補足説明:法的根拠
日本の国内法:労働基準法、食品衛生法、建設業法など、事業内容に応じた各種許認可法。
このコミットメントは、企業が合法的に運営され、労働者の基本的権利が確立されていることを保証する、事業継続の根幹に関わるものです。
遵守を裏付ける証拠をカテゴリー別に整理
1. 許認可の特定と管理
事業活動に必要な全ての許認可を特定し、取得・更新を管理する体制を構築します。
- 事業に必要な許認可リストと管理台帳。
- 許認可の取得・更新を担当する部署や担当者を定めた規定。
2. 営業許可の申請と取得
関連当局に対し、法に基づいた適切な申請手続きを経て、許可を取得します。
- 行政官庁への申請書類(事業計画書、施設図面等)の控え。
- 申請受理を証明する受付票や受領書。
- 許認可プロセスに関する行政との公式な通信記録。
3. 許可証と関連文書の保管
取得した許可証や検査済証などを適切に保管し、有効性を証明できる状態を維持します。
- 有効な営業許可証、免許、登録証の写し。
- 施設検査が完了し、合格したことを示す検査済証。
- 登記事項証明書(法人の場合)。
4. 就業規則の作成義務
常時10人以上の労働者を使用する事業者として、就業規則を作成する法的義務を果たします。
- 作成日、改訂履歴が明記された就業規則の文書。
- 従業員数が10人以上であることを示す人事記録(賃金台帳など)。
5. 必須記載事項の網羅
労働時間、賃金、退職など、法で定められた絶対的・相対的必要記載事項をすべて盛り込みます。
- 完成した就業規則の全文。
- 必須記載事項を網羅していることを確認するチェックリスト。
6. 社内への周知
作成した就業規則を、掲示、書面交付、データ共有などの方法で全労働者に周知します。
- 周知を行ったことを示す回覧文書や社内通知メールの記録。
- 事業場への掲示状況を示す写真。
- 従業員がいつでも閲覧できるイントラネットのスクリーンショット。
7. 届出義務の遵守
作成または変更した就業規則を、所轄の労働基準監督署長に遅滞なく届け出ます。
- 労働基準監督署に提出した「就業規則(変更)届」の控え。
- 郵送で提出した場合の発送記録や配達証明。
8. 受付記録の取得と保管
届出が受理されたことを証明する客観的な証拠を取得し、保管します。
- 労働基準監督署の受付印が押された就業規則の控え。
- e-Govで電子申請した場合の受付完了通知や到達確認画面の記録。
9. 変更時の適時な届出
法改正や労働条件の変更に伴い就業規則を改訂した際、その都度、届出を行います。
- 改訂履歴のある就業規則と、それに対応する複数の届出記録。
- 就業規則の定期的な見直しプロセスに関する記録。
10. 代表者の適正な選出
労働組合がない場合、労働者の過半数を代表する者を、民主的な手続きで選出します。
- 代表者選出の公示文書や説明資料。
- 挙手、投票等の民主的な選出プロセスを記録した議事録。
- 選出された代表者が過半数の支持を得たことを示す署名や投票結果。
11. 意見聴取プロセスの実施
就業規則の作成・変更案について、労働者代表に説明し、意見を聴取する機会を設けます。
- 意見聴取を実施した会議の議事録。
- 労働者代表に提示した就業規則の変更案や説明資料。
- 意見聴取に関する労働者代表との通信記録(メール等)。
12. 意見書の保管
労働者代表から聴取した意見を記した書面を取得し、届出書類と共に保管します。
- 労働者代表の署名または記名押印のある「意見書」。
- 意見書を添付して労働基準監督署に届け出た記録。
結論:継続的なコンプライアンス体制の重要性
本報告書で概説した証拠は、企業が日本の法令を遵守し、合法的に事業を運営していることを証明するために不可欠です。これらの義務を果たすことは、法的リスクを低減するだけでなく、従業員の権利を尊重し、良好な労使関係を育む上で極めて重要です。企業は、関連する全ての記録を法改正に基づき適切に(少なくとも5年間)保管し、コンプライアンスの証拠としていつでも利用できるように、継続的な管理体制を維持することが求められます。
重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。
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JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。
当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修)で、合計7度ファシリテーターを務めました。
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