JASTI 6-1-3 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。
JASTI 6-1-3 原文
工場は、必要な場合を除き、15 歳未満の子供を工場内(事務所、従業員寮 を除く)に立ち入らせてはならない。
達成すべきコミットメント
「私たちは、必要な場合を除き、15 歳未満の子供を工場内(事務所、従業員寮 を除く)に立ち入らせません。」
補足説明:法的根拠と国際基準
日本の国内法:労働基準法第56条(最低年齢)では、原則として満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、児童を労働者として使用することを禁じています。
国際基準:ILO第138号(就業の最低年齢に関する条約)、ILO第182号(最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約)が世界的な基準となります。
遵守を裏付ける証拠をカテゴリー別に整理
1. 方針とコミットメント
児童労働の禁止を明記した、経営層が承認した公式な方針を確立し、内外に公開します。
- 児童労働を明確に禁止する人権方針または行動規範。
- 方針のウェブサイトやサステナビリティ報告書での公開。
- 経営層による方針のレビュー・承認議事録。
2. 厳格な年齢確認プロセス
すべての採用候補者に対し、雇用前に公的証明書による年齢確認を義務付けます。
- 採用時の年齢確認手順を定めた採用マニュアル。
- 戸籍謄本・抄本や住民票記載事項証明書など、公的な年齢証明書の備え付け記録。
- 採用担当者向けの年齢確認トレーニング記録。
3. 記録の管理と保管
年齢確認書類を法令に従って適切に保管し、機密性を確保します。
- 事業場ごとに備え付けられた年齢証明書の保管ファイルやシステム記録。
- 個人情報保護法に準拠した、アクセス制限のある施錠可能な場所での保管。
4. サプライチェーン管理
取引先(サプライヤー)にも児童労働の禁止を求め、契約に遵守義務を盛り込みます。
- 児童労働禁止条項を含むサプライヤー行動規範。
- サプライヤーとの契約書における遵守誓約。
- サプライヤーに対する児童労働リスクに関する自己評価質問票。
5. 研修と意識向上
採用担当者、管理者、サプライヤーに対し、児童労働のリスクと防止策に関する研修を定期的に実施します。
- 研修の実施記録(日時、内容、参加者リスト)。
- 研修で使用した資料(プレゼンテーション、ハンドブック)。
- 研修効果測定のためのテストやアンケート結果。
6. 監査とモニタリング
自社およびサプライヤーの事業所において、児童労働がないことを確認するための監査を定期的に行います。
- 内部または第三者による監査の計画書および報告書。
- 監査での指摘事項に対する是正措置計画と完了報告。
- 非通知での監査記録(該当する場合)。
7. 若年労働者の保護
18歳未満の労働者(若年労働者)を、法律で定められた危険有害業務や時間外・深夜労働に従事させません。
- 若年労働者の就業を制限する業務リスト。
- 若年労働者の労働時間、休憩、休日を管理する記録。
- 危険有害業務への配置がないことを示す人事記録。
8. 苦情処理メカニズム
労働者や地域社会が、児童労働に関する懸念を安全かつ匿名で報告できる窓口を設置します。
- 内部通報制度に関する規定と周知資料。
- 専用のホットラインやメールアドレスの設置記録。
- 受け付けた苦情の調査・対応プロセスの記録。
9. 救済措置
万が一、児童労働が発見された場合に、当該児童を保護し、教育機会を確保するための救済手順を定めます。
- 児童労働発見時の救済・是正措置に関する方針や手順書。
- 地域のNGOや専門機関との連携記録。
- 救済事例の(個人情報を秘匿した)ケースファイル。
結論:児童の権利保護に向けた包括的アプローチ
児童労働の防止は、単一の対策で達成できるものではありません。明確な方針、厳格な採用プロセス、サプライチェーンへの働きかけ、継続的な監視、そして実効性のある救済措置を組み合わせた、多層的かつ包括的なアプローチが不可欠です。これらのシステムを構築し、継続的に運用・改善していくことが、すべての子どもの権利と未来を守るという企業の社会的責任を果たす上で極めて重要です。
重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。
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JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。
当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修)で、合計7度ファシリテーターを務めました。
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