JASTI 6-14-2 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。
JASTI 6-14-2 原文
工場は、就業規則で定められた傷病休暇、慶弔休暇の取得を制限してはな らない。
達成すべきコミットメント
「私たちは、就業規則で定められた傷病休暇、慶弔休暇の取得を制限しません。」
補足説明:法的根拠と国際基準
日本の国内法:傷病休暇・慶弔休暇は法定休暇ではありませんが、就業規則に定めれば労働契約の内容となり、会社は遵守義務を負います。不利益な変更や、取得を理由とする不利益な取り扱いは法的に問題となる可能性があります。
国際人権基準:ILO原則やUNGPsは、労働者の健康への権利や公正な待遇を保障しており、制度化された休暇の取得を実質的に保証することは、これらの原則を尊重する行為です。
遵守を裏付ける証拠をカテゴリー別に整理
1. 明確な社内規程の整備
傷病休暇・慶弔休暇の対象者、日数、取得手続き、有給・無給の別などを就業規則に明確に定めます。
- 就業規則の傷病休暇・慶弔休暇に関する条項。
- 「取得を不当に制限しない」旨を明記した方針。
- 従業員への周知を証明する記録。
2. 公正で円滑な申請プロセス
従業員が休暇を申請する際の負担を軽減し、迅速かつ公正な承認プロセスを確立します。
- 簡素化された申請様式や電子申請システムの導入記録。
- 合理的な範囲での証明書類要求ルール(例:短期傷病での診断書免除)。
- 休暇申請の承認・不承認記録と、その理由の文書化。
3. 不利益取扱いの禁止
休暇取得を理由とする、人事評価、昇進、賞与などにおけるいかなる不利益な取り扱いや報復行為も行いません。
- 報復・不利益取扱いの禁止を明記した行動規範や人事方針。
- 休暇取得が人事評価に影響しないことを定めた評価ガイドライン。
- 休暇理由に関する機密保持の方針と運用記録。
4. 実際の休暇取得実績
従業員が実際に傷病休暇や慶弔休暇を取得していることを、客観的なデータで示します。
- 休暇申請の承認記録。
- 休暇取得が反映された勤怠管理システムの記録。
- (集計・匿名化された)傷病休暇・慶弔休暇の取得日数や取得率データ。
5. 支援的な職場文化の醸成
経営層が率先してメッセージを発信し、従業員が心理的な負担なく休暇を取得できる文化を育みます。
- 休暇取得を奨励するCEOや役員からのメッセージ。
- 休暇取得者の業務をカバーする同僚への配慮や支援策の記録。
- 従業員サーベイにおける「休みやすさ」に関する肯定的な結果。
6. 管理職への教育
管理職が休暇制度を正しく理解し、部下の休暇取得を妨げることなく、公平に運用できるよう研修を実施します。
- 休暇管理やハラスメント防止に関する管理職向け研修の実施記録。
- 休暇承認に関する明確なガイドライン。
7. 柔軟な休暇制度
通院や家族のケアなど、多様なニーズに対応するため、半日単位や時間単位での休暇取得を可能にします。
- 時間単位休暇制度に関する就業規則の規定。
- 失効した年次有給休暇を傷病等のために積み立てる制度の記録。
- 柔軟な休暇取得の実績データ。
8. 実効的な苦情処理制度
休暇取得を不当に制限されたり、不利益な扱いを受けたりした場合に、従業員が安全に相談・通報できる窓口を設けます。
- 内部通報制度に関する規定と周知記録。
- 機密保持と報復禁止を保証するプロセスの文書化。
- 休暇に関する相談・苦情の受付・対応記録(匿名化)。
9. 監査とモニタリング
休暇制度の運用状況を定期的に監査し、取得率や不承認理由などを分析して、継続的な改善に繋げます。
- 内部監査報告書。
- 休暇取得データに関する経営層への報告記録。
- 監査結果に基づく是正措置計画と完了報告。
結論:従業員の福祉と信頼を支える休暇制度
傷病休暇や慶弔休暇の取得を制限しないという約束は、企業の思いやりと従業員への尊重を示す重要な指標です。このコミットメントの達成は、単にルールを設けるだけでなく、従業員が困難な状況でためらうことなく支援を求められる、信頼と支援に基づいた職場文化を築くことによって証明されます。公正な運用と継続的な改善を通じて、企業は真に「人を大切にする」組織としての評価を確立することができます。
重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。
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JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。
当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修)で、合計7度ファシリテーターを務めました。
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