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JASTI 6-6 遵守の証拠

JASTI 6-6 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。

JASTI 6-6 原文

工場は、従業員を解雇する場合、工場所在地の法令に定められた規定、及び契約によって定められた規定に従って行わなくてはならない。

達成すべきコミットメント

「私たちは、労働者等を解雇する場合、事業場所在地の法令に定められた規定、及び契約によって定められた規定に従って行います。」

補足説明:法的根拠と国際人権

日本の国内法:労働契約法第16条の「解雇権濫用法理」が中核となり、解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が厳格に求められます。労働基準法は解雇予告等の手続きを定めます。

国際人権基準:ILO第158号(雇用終了条約)は、正当な理由なき解雇の禁止や公正な手続きの権利を定めており、企業の倫理的基準の指針となります。

遵守を裏付ける証拠をカテゴリー別に整理

1. 方針・就業規則の整備

解雇事由(普通解雇、懲戒解雇、整理解雇)を就業規則に明確に規定し、全従業員に周知します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 労働基準監督署に届け出た最新の就業規則(解雇条項を含む)。
  • 就業規則の周知を証明する記録(イントラネット掲載、書面交付の受領サイン等)。

2. 合理的な理由の文書化

解雇の根拠となる事実を、客観的な証拠に基づき時系列で記録・保管します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 勤務成績不良:人事評価記録、改善指導・面談記録、研修記録。
  • 不正行為:調査報告書、目撃者の証言、物的証拠。
  • 整理解雇:経営状況を示す財務資料、人員削減の必要性を示す文書。

3. 解雇回避努力の実施

解雇を最終手段とし、その前に可能な限りの代替措置を検討・実施します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 配置転換、職務変更の検討・提案記録。
  • 追加の研修や教育機会の提供記録。
  • 整理解雇の場合:希望退職者の募集、新規採用の抑制などの記録。

4. 公正な手続きの保証

解雇に至るプロセスにおいて、労働者の権利を尊重し、弁明の機会などを提供します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 懲戒解雇の場合:弁明の機会を与えた通知書や議事録。
  • 対象労働者や労働組合との協議記録。
  • 整理解雇の場合:説明会の議事録。

5. 解雇予告の遵守

労働基準法に基づき、少なくとも30日前の予告、または解雇予告手当の支払いを確実に行います。

遵守を示す証拠 (例):
  • 労働者が受領した日付入りの解雇予告通知書のコピー。
  • 受領を拒否された場合の配達証明付き内容証明郵便の記録。
  • 解雇予告手当を支払ったことを示す銀行振込記録や領収書。

6. 差別の禁止

国籍、信条、性別、社会的身分、組合活動、妊娠・出産などを理由とする不当な解雇を行いません。

遵守を示す証拠 (例):
  • 無差別を明記した人権方針や行動規範。
  • 整理解雇における、客観的で差別的でない人選基準と適用記録。
  • 解雇制限期間(産休・育休、業務上の傷病)中の解雇がないことの記録。

7. 退職時証明書の交付

解雇された労働者から請求があった場合、解雇理由を記載した証明書を遅滞なく交付します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 労働者からの請求記録と、それに応じて発行した解雇理由証明書のコピー。
  • 証明書の発行履歴を管理するログ。

8. 管理職への研修

管理職に対し、解雇に関する法規制や人権配慮の重要性について、定期的な研修を実施します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 解雇関連法規に関する研修の実施記録(内容、参加者リスト)。
  • ケーススタディを含む、実践的な研修資料。

9. 苦情処理と監査

不当解雇に関する相談窓口を設け、解雇プロセスが適切か定期的に監査し、継続的な改善を図ります。

遵守を示す証拠 (例):
  • 内部通報制度の運用記録。
  • 解雇関連の苦情と、その調査・解決記録(匿名化)。
  • 労働慣行に関する内部監査報告書と是正措置計画。

結論:公正性と尊厳を守る解雇慣行

解雇規定の遵守は、法的リスクの回避に留まらず、労働者の尊厳と権利を守るという企業の倫理的責任の根幹をなします。客観的で合理的な理由、公正な手続き、そして人権への配慮という3つの柱に基づいた一貫したプロセスを確立し、その実践を具体的な証拠をもって示すことが不可欠です。本インフォグラフィックで提示された証拠を体系的に整備・運用することで、企業は公正な解雇慣行へのコミットメントを確実に履行し、社会からの信頼を維持することができます。

重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。

JASTI監査対策のご相談は、私どもHCDコンサルティングへ

JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。

当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修で、合計7度ファシリテーターを務めました。

JASTI監査に向けたコンサルティングは、私どもHCDコンサルティングにお任せください。