JASTI 6-7 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。
JASTI 6-7 原文
工場は、従業員の休憩時間については、工場所在地の法令に従い、当該法令以上の休憩時間を与えなくてはならない。
達成すべきコミットメント
「工場は、従業員の休憩時間については、工場所在地の法令に従い、当該法令以上の休憩時間を与えなくてはならない。」
補足説明:法的根拠と国際基準
日本の国内法:労働基準法第34条が休憩時間の最低基準(6時間超で45分、8時間超で1時間)と、付与に関する三原則(途中付与、一斉付与、自由利用)を定めています。
国際人権基準:ILO条約やSA8000等の国際行動規範は、労働者の健康と福祉を守る観点から、十分な休息の確保を求めています。
遵守を裏付ける証拠をカテゴリー別に整理
1. 就業規則への明記
法定基準を満たす、またはそれを上回る休憩時間の長さ、時間帯、付与方法を就業規則に明確に定めます。
- 労働基準監督署に届け出た最新の就業規則(休憩時間条項)。
- 交代制休憩の場合、その根拠となる労使協定書。
2. 勤怠記録による客観的把握
全従業員の休憩取得状況を、タイムカードや勤怠管理システム等により客観的に記録・管理します。
- 休憩開始・終了時刻が打刻されたタイムカードの記録。
- 勤怠管理システムのログやレポート(法定保存期間(5年)遵守)。
- 実態と乖離がある場合の修正・承認記録。
3. 休憩三原則の遵守
休憩を「労働時間の途中」に、「一斉に(例外措置を除く)」与え、「自由に利用」させるという法的原則を遵守します。
- 勤務シフト表や勤怠記録(途中付与の証明)。
- 休憩時間中の電話番や業務指示がないことを示す運用ルール。
- 交代制休憩に関する有効な労使協定書(一斉付与の例外)。
4. 残業時の休憩管理
残業により総労働時間が法定基準を超える場合、必要な追加休憩を確実に付与します。
- 残業時の追加休憩に関する社内ルールやマニュアル。
- 管理監督者への周知・教育記録。
- 残業者の勤怠記録における追加休憩の取得実績。
5. 休憩環境の整備
従業員が業務から完全に離れ、心身ともに休息できる快適な休憩環境を提供します。
- 執務エリアから独立した休憩室の写真。
- 休憩室の設備リスト(椅子、テーブル、給湯設備など)。
- 従業員からの休憩環境に関するアンケート結果。
6. 周知と教育の徹底
全従業員と管理監督者が休憩に関するルールを正しく理解し、遵守するよう教育します。
- 休憩規則に関する掲示物や配布資料。
- 新人研修や管理職研修での説明記録。
- 多言語での説明資料(外国人労働者がいる場合)。
7. 苦情処理メカニズム
休憩が適切に取れない等の問題を、従業員が報復の恐れなく相談できる窓口を設けます。
- 相談窓口の設置と周知に関する記録。
- 休憩に関する相談・苦情の受付・対応記録(匿名化)。
8. 内部監査と自己点検
休憩時間の管理・運用状況を定期的に内部で監査し、問題点の早期発見と是正に努めます。
- 内部監査計画書、チェックリスト、監査報告書。
- 監査で発見された問題に対する是正措置計画と完了報告。
9. 「法令以上」の取り組み
健康経営の観点から、休憩の「質」を高め、従業員のウェルビーイング向上を目指します。
- 法定以上の休憩時間設定や、柔軟な休憩取得制度の導入記録。
- 仮眠室やリフレッシュスペースなど、休憩の質を高める施設の提供。
- 従業員満足度調査における休憩関連の評価スコアと改善活動。
結論:生産性と福祉を両立させる休憩管理
適切な休憩時間の確保は、単なる法令遵守義務ではなく、従業員の健康と安全を守り、工場の生産性と品質を維持向上させるための経営的な投資です。規程の整備、客観的な記録管理、そして休憩の三原則の徹底という基本を守るとともに、休憩の質を高める「法令以上」の取り組みを推進することで、企業は従業員と社会からの信頼を得て、持続的な成長を実現することができます。