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JASTI 7-1-7 遵守の証拠

JASTI 7-1-7 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。

JASTI 7-1-7 原文

工場は、法令で定める最低賃金及びその他の賃金に関する規定を、①掲示 する②雇用契約に記載する③説明会の実施、などの方法によって従業員に 周知しなくてはならない。

達成すべきコミットメント

「私たちは、法令で定める最低賃金及びその他の賃金に関する規定を、①掲示する②雇用契約に記載する③説明会の実施、などの方法によって労働者等(派遣労働者を除く)に周知します。」

補足説明:法的根拠と国際基準

日本の国内法:最低賃金法第8条は最低賃金の周知義務を、労働基準法第15条および第106条は賃金を含む労働条件の明示と就業規則の周知を義務付けています。

国際基準:ILO第95号条約(賃金の保護)は、労働者が雇用される前に賃金条件を知らされる権利を定めており、情報の透明性は国際的な人権原則の基本です。

遵守を裏付ける証拠をカテゴリー別に整理

1. 周知に関する方針と体制

賃金規定に関する情報を、掲示・契約書・説明会という複数の方法で周知するための方針と、その実行体制を構築します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 賃金規定の周知に関する社内方針やマニュアル。
  • 周知活動の担当部署や責任者の明確化。
  • 方針の定期的な見直し・更新の記録。

2.【掲示】最低賃金の周知

最低賃金法に基づき、適用される最低賃金額、発効日などを事業場の見やすい場所に掲示します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 厚労省の公式ポスター等を掲示した日付入りの写真。
  • 最低賃金改定に伴う掲示物の更新記録。
  • 全事業所での掲示状況を確認した監査記録。

3.【掲示】その他の賃金規定

労働基準法に基づき、就業規則(賃金規程を含む)を掲示、備え付け、または電子的方法で閲覧可能にします。

遵守を示す証拠 (例):
  • 就業規則をファイリングし、休憩室等に備え付けた記録。
  • 社内イントラネットや共有フォルダへの掲載記録(スクリーンショット)。

4.【雇用契約】労働条件の明示

採用時に、個別の賃金条件(基本給、手当、昇給等)を労働条件通知書等の書面で交付します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 法定記載事項を網羅した労働条件通知書のテンプレート。
  • 従業員が署名した労働条件通知書の控え。
  • 電子交付の場合、労働者の同意と受領確認の記録。

5.【雇用契約】就業規則との連携

労働契約書において、詳細な規定(手当の計算方法等)については、周知済みの就業規則の関連条項を明確に参照します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 労働契約書内の「詳細は賃金規程第〇条による」といった参照条項。
  • 参照先の就業規則がアクセス可能であることの証明。

6.【説明会】全体説明の実施

入社時や制度変更時に説明会を実施し、最低賃金や会社の賃金制度の概要を口頭でも説明します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 説明会で使用したプレゼンテーション資料や配布物。
  • 説明会の議事次第(アジェンダ)。
  • 説明会の実施日時と出席者を示す記録。

7.【説明会】理解促進と対話

説明会において質疑応答の時間を設け、従業員の疑問を解消し、双方向のコミュニケーションを図ります。

遵守を示す証拠 (例):
  • 質疑応答の要約記録やFAQリスト。
  • 説明会後のアンケートによる理解度調査の結果。

8. 記録管理と監査

全ての周知活動に関する証拠を体系的に保管し、その実施状況を定期的に内部監査します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 周知活動の記録を管理するファイルやシステム。
  • 法定期間(5年)の記録保存を定めた規程。
  • 周知状況に関する内部監査報告書と是正措置記録。

9. 継続的改善

従業員のフィードバックや監査結果に基づき、周知方法を常に見直し、より分かりやすく効果的な伝達方法を追求します。

遵守を示す証拠 (例):
  • 従業員からのフィードバック収集の仕組み。
  • フィードバックを受けて説明資料や周知方法を改善した事例。

結論:透明性のあるコミュニケーションで信頼を構築

賃金規定の周知は、単なる情報伝達ではなく、労働者の権利を尊重し、公正な労使関係を築くための対話です。掲示、雇用契約、説明会という多層的なアプローチを組み合わせ、その全てのプロセスを文書化することで、企業は賃金に関する透明性を確保し、従業員と社会からの信頼を得ることができます。

重要な注意点
ここで挙げる証拠は、遵守を示すための具体例です。しかし、これらを全て揃えなくとも十分に遵守を証明又は疎明できることもあります。それは御社の状況次第、そして監査の判定基準次第です。 詳しくは私どもHCDコンサルティングにお尋ねください。

JASTI監査対策のご相談は、私どもHCDコンサルティングへ

JASTIは、中小企業等が最低限遵守すべき事項を社会人権面を中心に網羅した監査要求事項・評価基準から成り、ILO(国際労働機関)中核的労働基準を含みます。

当事務所代表は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修(ILO駐日事務所の技術協力で構築された研修で、合計7度ファシリテーターを務めました。

JASTI監査に向けたコンサルティングは、私どもHCDコンサルティングにお任せください。