つり上げ荷重5t未満のクレーンの運転業務(移動式クレーンを除く)に労働者を就かせる場合、事業者は労働安全衛生法に基づき、その労働者に対して特別教育を実施する義務があります。
この教育は、クレーンの安全な操作に必要な知識と技術を習得することを目的としています。

特別教育の概要
この特別教育は、学科教育と実技教育から構成され、合計で13時間以上の講習が必要です。
- 根拠法令: 労働安全衛生法第59条第3項、労働安全衛生規則第36条第15号、クレーン取扱い業務等特別教育規程
- 対象業務: つり上げ荷重が5トン未満のクレーン(移動式クレーンを除く)の運転業務
- 合計時間: 13時間以上(学科9時間、実技4時間)
教育内容
教育内容は、労働安全衛生法令に定められたカリキュラムに沿って実施されます。
学科教育(9時間以上)
科目 | 内容 | 時間 |
クレーンに関する知識 | クレーンの種類及び型式主要構造部分、作動装置、安全装置及びブレーキの機能取扱い方法 | 3時間 |
原動機及び電気に関する知識 | 電気に関する基礎知識電動機、開閉器、コントローラー等の電気を通ずる機械器具電路の点検及び補修感電による危険性 | 3時間 |
クレーンの運転のために必要な力学に関する知識 | 力(合成、分解、つり合い、モーメント)簡単な図形の重心と物の安定荷重、ワイヤロープ、フック、つり具の強さワイヤロープの掛け方と荷重の関係 | 2時間 |
関係法令 | 労働安全衛生法、同施行令、同施行規則及びクレーン等安全規則中の関係条項 | 1時間 |
実技教育(4時間以上)
科目 | 内容 | 時間 |
クレーンの運転 | 重量の確認荷のつり上げ定められた経路による運搬荷の卸し | 3時間 |
クレーンの運転のための合図 | 合図の方法 | 1時間 |
修了証
この特別教育を修了した労働者には、修了証が交付されます。事業者は、労働者が当該業務に従事する間、修了証の記録を保管する必要があります。
注意点
- この特別教育は、あくまで「つり上げ荷重5t未満」のクレーンが対象です。5t以上のクレーンを運転するには、別途「クレーン・デリック運転士免許」や「床上操作式クレーン運転技能講習」の修了が必要となります。
- クレーンの運転業務と合わせて、荷をフックに掛け外しする「玉掛け」作業を行う場合は、別途「玉掛け技能講習」または「玉掛け特別教育」の修了が必要です。
この特別教育は、各地の教習所や労働基準協会などで受講することができます。