企業の経営者様、人事労務や現場の管理者の皆様。
貴社では、フォークリフト、建設機械、動力プレス機などを使用されていますか?

もしそうであれば、特定自主検査は、法律で定められた企業の重要な義務です。従業員の安全と企業の信頼を守るための生命線とも言えます。
「うちは定期的に点検しているから大丈夫」と思っていても、法律が求める要件を満たしていなければ、重大なリスクを抱えていることになります。
今回は、そんな「知らなかった」では済まされない特定自主検査について、その概要から具体的な実施方法まで、分かりやすく解説します。
そもそも「特定自主検査」とは?
特定自主検査とは、一言でいえば「危険性が高い特定の機械に義務付けられた、専門家による詳細な検査」のことです。
多くの事業所で使われている自動車に「車検」があるように、事業用の特定の機械にも、専門的な知識を持つ者による定期的な”健康診断”が法律で義務付けられています。日常的に行う「始業前点検」とは異なり、より専門的で詳細なチェックを行うのが特徴です。
◆目的
- 機械の故障や不具合を未然に防ぎ、労働災害を防止すること
- 従業員の安全を確保し、安心して働ける職場環境を維持すること
- 機械の性能を維持し、生産性の低下を防ぐこと
法律上の義務と罰則
この検査は、努力目標や推奨事項ではありません。労働安全衛生法第45条によって事業者に課せられた、れっきとした法的義務です。
もし、この検査の実施を怠ったり、無資格者が行ったり、検査記録(3年間の保存義務)を保管していなかったりした場合には、50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
万が一、未実施の機械で事故が発生した場合、企業の安全配慮義務違反が厳しく問われることは言うまでもありません。
対象となる主な機械
特定自主検査の対象となるのは、主に以下の機械です。貴社で使用している機械がないか、改めてご確認ください。
- フォークリフト
- 車両系建設機械(ブルドーザー、油圧ショベル、ロード・ローラーなど)
- 不整地運搬車
- 高所作業車(作業床の高さが2m以上のもの)
- 動力プレス機械
※原則として1年に1回(不整地運搬車は2年に1回)の実施が必要です。
誰が検査を実施できるのか?
特定自主検査は、誰でも実施できるわけではありません。法律で定められた資格を持つ者のみが実施を許可されています。
実施方法は、大きく分けて2つあります。
- 事業内検査自社の従業員で、厚生労働大臣が定める研修を修了するなど、特定の資格を持つ者が検査を実施する方法です。内製化により、コストやスケジュールの柔軟な調整が期待できます。
- 検査業者による検査厚生労働大臣などに登録された専門の検査業者に依頼して、検査を実施してもらう方法です。多くの企業がこの方法を採用しており、専門家による確実な検査が保証されます。
検査に合格した機械には、その証として検査済標章が貼付されます。
まとめ:安全な職場は、確実な点検から
特定自主検査は、コストや手間がかかるかもしれません。しかしそれは、かけがえのない従業員の命と、長年築き上げてきた企業の信頼を守るための未来への投資です。
自社の機械が正しく検査・管理されているか、この機会にぜひ一度ご確認ください。法律上の義務を確実に果たし、誰もが安心して働ける職場環境を維持していくことが、企業の持続的な成長に繋がります。