JASTI 5-6-3 の遵守を、どのような証拠をもって示せばいいか、簡単にまとめます。
JASTI 5-6-3 原文
消火器は床に直接置いてはならず、周囲に物が置かれないようマークし周 囲から目立つように表示しなければならない。工場所在地の法令に従い、 設置の高さや部屋の面積に応じた本数を設置しなければならない。法令の 定めがない場合、床面からの高さは 1.5ｍ以下に、各フロア、仕切られた各 部屋に、100 ㎡に少なくとも 1 本以上設置し、階ごとに建物のどこからで も消火器までの歩行距離が 20m 以内にあるよう、設置しなくてはならな い。
達成すべきコミットメント
「私たちは、以下のことがらを遵守します。消火器を床に直接置きません。消火器の周囲に物が置かれないようマークし、周囲から目立つように表示します。事業場所在地の法令に従い、消火器設置場所の高さや部屋の面積に応じた本数を設置します。…階ごとに建物のどこからでも消火器までの歩行距離が 20m 以内にあるよう、設置します。」
補足説明：法的根拠
消防法施行令 第10条 & 施行規則 第6条・第7条：消火器の設置に関する具体的な基準を定めています。これには、建物の面積や構造に応じた必要本数（能力単位）、歩行距離（20m以内）、設置の高さ（床から1.5m以下）、そして標識の設置義務などが含まれます。
コミットメント達成の意義
適切に設置された消火器は、火災の初期段階で最も効果的な消火手段です。法令に基づき、誰でも、いつでも、迅速にアクセスできる場所に消火器を設置・管理することは、火災による被害を最小限に食い止め、労働者の生命と企業の財産を守るための基本中の基本です。
遵守を裏付ける証拠ポートフォリオ
1. 配置計画と能力単位
法令に基づき、建物の面積や用途に応じた適切な本数の消火器を計画的に設置します。
- 面積や構造に応じた必要能力単位の計算シート。
- 各消火器の能力単位と合計値を示すリスト。
- 消防計画書に添付された、消火器の配置図。
2. 歩行距離20m以内の確保
どこからでも迅速に消火器に到達できるよう、アクセス性を確保します。
- 各消火器から半径20mの円を描画し、フロア全体をカバーしていることを示す設置図面。
- 通路に障害物がなく、歩行経路が確保されている写真。
3. 設置場所の高さと方法
誰でも容易に手に取れる高さに設置し、腐食を防ぐために床への直置きを避けます。
- 設置高さが床から1.5m以下であることを示す、メジャーを当てた写真。
- 設置台や壁掛け金具に収納されている状態の写真。
- 床への直置き禁止を定めた社内マニュアル。
4. 周囲の環境整備と表示
緊急時に消火器の場所を即座に認識でき、迅速に使用できる環境を維持します。
- 「消火器」と表示された標識が設置されている写真。
- 消火器の周囲に物が置かれていないことを示す写真。
- 床面に区画線（マーキング）が引かれている写真。
5. 日常・定期の点検記録
設置状況が継続的に維持されていることを、日常的な管理活動で証明します。
- 内部安全パトロールのチェックリストと実施記録。
- 「消火器の周囲に障害物なし」「標識は明瞭」等の確認項目。
- 不備発見時の是正措置記録。
6. 教育と周知
従業員が消火器の場所を熟知し、緊急時に行動できるよう備えます。
- 消火器の設置場所や初期消火に関する安全衛生教育の記録。
- 避難経路図への消火器位置の明記と、その周知記録。
7. 労使による改善活動
現場の声を反映し、組織全体で安全性を向上させる仕組みが機能していることを示します。
- 安全衛生委員会で消火器の設置状況を議題とした議事録。
- 従業員からの改善提案（「ここにも消火器が欲しい」等）と対応記録。
8. 法定点検との連携
設置状況が、有資格者による法定点検でも確認されていることを示します。
- 消防用設備等点検結果報告書内の「消火器具点検票」。
- 点検票内の「設置場所」「標識」「障害物」等の項目が正常であることの記録。
体系的な管理による実効性の確保
消火器の適切な設置は、単に数を揃えることではありません。法令に基づき、必要な場所に、必要な本数を、誰もがアクセスしやすいように設置し、その状態を継続的に維持管理することが、真に実効性のある初期消火体制を構築する鍵となります。