投稿日

  カテゴリー:

  投稿者:

WFSGI行動規範やシマノベンダー行動規範への対応の第一歩はILOの考え方を学ぶこと

こんにちは。HCDコンサルティング代表の中川です。

世界スポーツ用品工業連盟行動規範(WFSGI Code Of Conduct:以下「WFSGI行動規範」 )は、自転車部品と釣り具の巨大メーカーであるシマノが、ベンダー行動規範(自社のサプライヤーが守るべき行動規範:以下「シマノベンダー行動規範」)として採用しています。WFSGI行動規範はスポーツ関連産業では非常に影響力のある行動規範です。

昨今、WFSGI行動規範を遵守するよう要求される会社が増えているようで、弊所へのご相談・お問い合わせも増えて来ました。弊所では実際に企業様を支援させていただいております。

支援にあたって、まず最初にやるべきことは「WFSGI行動規範対応の第一歩はILO の考え方を学ぶこと」だと、申し上げさせていただいております。

その点について思うところを書きます。

WFSGI行動規範の目的と影響力の大きさ

WFSGI(World Federation of the Sporting Goods Industry)は、1978年の設立以来、責任ある持続可能な取り組みの推進を使命とし、公平性、誠実さ、相互理解、高い倫理観を重視しています。

WFSGIは、会員企業に対して、雇用主としてだけでなくサプライヤーの顧客としても、影響力をより深く行使するよう求めています。

したがって、WFSGIの影響は、 WFSGIの会員企業と直接的または間接的に取引関係を通じて繋がっている企業にまで、幅広く 及んでいくことになります。

WFSGI 行動規範の目的は、会員企業やサプライヤーとそこで働く従業員に対して、WFSGI の理念を実現するために遵守が期待される基準および慣行についての指針を提供することです。

そして、WFSGI 行動規範を詳細に解説する文書として、SUPPORTING STANDARDS & GUIDELINES FOR THE WFSGI CODE OF CONDUCT(WFSGI行動規範の補足的基準ガイドライン) があります。

当然ですが、会員企業のサプライヤーにも、WFSGI 行動規範や WFSGI行動規範の補足的基準ガイドライン の影響が及び、それらを遵守するよう要請される可能性が十分にあるわけです。

WFSGI行動規範には、ILOの考え方が反映されている

WFSGI行動規範やWFSGI行動規範の補足的基準ガイドラインは、

  • 国際労働機関(ILO)の関連条約
  • 世界人権宣言
  • 国際的に認められた労働安全衛生基準(具体的にはISO45001など)

に基づいて作られています。これは WFSGI行動規範 を英文のまま読めば一目瞭然です。

このことは、WFSGI行動規範が単なる組織のルールではなく、国際的な人権や労働の権利に関する基準を順守するよう強く要請するものであることを示しています。

WFSGI 行動規範 には ISO も影響しますが…

ところで、WFSGI 行動規範 の3原則の一つである「国際的に認められた労働安全衛生基準」は、いったい何のことでしょうか?

「WFSGI行動規範の補足的基準ガイドライン」の「資料/参考文献」セクションでは、国際的に認められた労働安全衛生基準の例として「OHSAS 18001, Occupational Health and Safety Management System Requirements」が挙げられています。

そうすると、国際的に認められた労働安全衛生基準とは、「OHSAS 18001, Occupational Health and Safety Management System Requirements」のことだと思いますよね。

しかし、OHSAS 18001は、現在すでにISO 45001に移行しています。

したがって、現在は、WFSGI 行動規範 や「WFSGI行動規範の補足的基準ガイドライン」でいう 国際的に認められた労働安全衛生基準とは、ISO 45001のことを指します。

WFSGI行動規範のもとになる3つの原則の一つがISO 45001である以上、WFSGIに対するISOの影響は大きなものになります。

さらに、WfSGIに関する監査を行う会社の大半は、ISO規格の監査経験が豊富なところになるでしょう。

また、「WFSGI行動規範の補足的基準とガイドライン」やシマノベンダー行動規範には「要求事項」といういかにもISO監査という言葉遣いが見られます。

WFSGI行動規範への対応では、ISOは無視できません。

ILOの影響は、もっともっと大きい

そして、ISO 以上に WFSGI行動規範 に大きな影響を及ぼすのが、ILOの考え方です。

先ほども述べたように、ILOの諸条約はWFSGI行動規範 の基盤の一つです。

また、世界人権宣言でうたわれている各人権は、ILOの諸条約や中核的労働基準にしっかりと組み込まれています。

さらに、国際的に認められた労働安全衛生基準である ISO45001の開発にあたり、ILOはISOに多大な協力をしています。

このように、ILOはWFSGIの3つの原則のすべてに深くコミットしています。

WFSGI行動規範対応の第一歩は、ILOの考え方を学ぶこと

そういうわけで 、WFSGI行動規範 への対応の第一歩は、大きな影響を及ぼすILOの考え方を学ぶことです。

対応のなかで、何かわからないことが出てきたら、ILO の文書で調べなければなりません。

キーワードの意味も ILO の文書で調べる

例えば、WFSGI 行動規範 では、Social Compliance(社会的コンプライアンス)という言葉が重要なキーワードです。Social Compliance は、WFSGI 行動規範では何度も登場しますが、私たち日本人にとってなじみのない言葉です。

そこで、Social Compliance の意味について調べる必要があるのですが、この時に ILO の文書で調べることが大事です。

その結果、次のようなことがわかります。

Social compliance is an indicator which indicates how enterprises behave towards employees and environment as well as how social responsibility is applied within the enterprise. 

社会的コンプライアンスは、企業が従業員や環境に対してどのように行動するか、また企業内で社会的責任がどのように適用されているかを示す指標です。

https://www.ilo.org/resource/news/social-compliance-booklets-which-were-prepared-cooperation-ilo-office

Social compliance is an indicator of how enterprises treat their employees and environment, and apply the concept of social responsibility within their organizations and in their areas of influence. Therefore, it is a critical part of social justice and decent work, two core goals of ILO. 

社会的コンプライアンスは、企業が従業員や環境をどのように扱い、組織内および影響範囲内で社会的責任の概念をどのように適用しているかを示す指標です。したがって、これはILOの2つの中核目標である社会正義とディーセントワークの重要な部分です。

https://www.ilo.org/resource/news/brand-new-social-compliance-booklets-ilo-office-turkey-and-ikmib

法規制遵守に加え、労働者の権利保護、安全で健康的な職場環境の提供、環境への配慮など、社会的責任を果たすための国際的な基準への適合、およびそのための体制構築と継続的な取り組み全般を指す言葉が、Social Compliance(社会的コンプライアンス)なのだと思います。

WFSGI 行動規範の大半は、ILOの専門である「労働条件」に関するもので出来ています。

ここで、WFSGI 行動規範の目次を見てみましょう。

  1. Legal Compliance 法令遵守
  2. Working Conditions 労働条件
    2.1 Forced Labour 強制労働
    2.2 Non-Discrimination 差別の排除
    2.3 Freedom of Association and Collective Bargaining 結社の自由及び団体交渉の自由
    2.4 Wages and Benefits 賃金及び福利厚生
    2.5 Hours of Work 労働時間
    2.6 Regular Employment 正規雇用(常用雇用)
    2.7 Child Labour 児童労働
    2.8 Health and Safety 安全衛生
    2.9 Harassement or abuse ハラスメントまたは虐待
  3. Environment 環境
  4. Subcontractors 下請け業者
  5. Community Involvement 地域社会への貢献
  6. Company Specific Standards 会社独自基準
  7. Verification and Compliance 検証および遵守

WFSGI 行動規範の内容は、Working Conditions 労働条件 に関する内容が多いです。

その内容から言っても、WFSGI 行動規範について分からない部分は、 ILO(の文書)に尋ねるべきです。

学ばずに対応すると大けがをする

他の業務が多忙なのに、この上 ILO の考え方についてしっかり勉強するのは大変です。でも必要なことです 。

行動規範が ILO の考え方に基づいている以上、 I LO の考え方をろくに学ばずに、 上辺だけで人権尊重に取り組んでいる風に装うと 大変な結果を招きかねません。

行動規範への対応には、 ILO の考え方を学ぶことは必須です。

私は ILOの考え方をしっかり学んでいます。

WFSGIへの対応を支援する以上、私も、人権尊重に関するILOの考え方をしっかり学んでいます。

私は、ILOの考え方を学んだ経験も、ファシリテーターとして学びをサポートした経験も、かなり豊富に持っています。

経験があるからといって、私が優秀だということはありません。しかし、優秀ではないだけに、急に「人権」を学ぶ必要に迫られて困惑する皆様の気持ちはよくわかります。

この経験を存分に生かし、WFSGI行動規範やシマノベンダー行動規範への対応に悩む方々を、サポートさせていただきたいと思っています。

それでは、上記3つの赤字箇条書きの経験について、もう少し詳しく書きます。

受講生として「ビジネスと人権」研修を修了

私は、全国社会保険労務士会連合会が実施する「ビジネスと人権」研修を、初級編、上級編(対面セッション)ともすべて修了しました。

この研修のプログラムはILOの技術協力で構築されました。そして、上級編のメインの研修テキストは、ILOの協力 を得て確認すべき具体的な人 権課題について解説した「繊維産業の責任ある企業行動ガイドライン」です。

つまり、全国社会保険労務士会連合会が実施する「ビジネスと人権」研修は、ILOの考え方が色濃く反映された研修です。

特に、上級編(対面セッション)は、グループ内での議論やグループワークを含む実践的内容です。

2日間連続で受講するためかなりハードで、2日目の最後には疲労困憊となったことをよく覚えています。

ファシリテーター養成研修も修了

さらに、私は、全国社会保険労務士会連合会のファシリテーター養成研修も修了しました。

ファシリテーター養成研修は、「ビジネスと人権」について正確で分かりやすく伝達できる人材の養成を⽬的として、ILOからの技術協力を受けて開催されたものです。

ファシリテーター養成研修では、ILO本部(ジュネーブ)やILO駐日事務所のスタッフが登壇し、「ビジネスと⼈権」に関する具体的なアドバイザリー対応やファシリテーションスキルを直接御教授してくださいました。

研修ファシリテーターを7回務めました

そして私は、全国社会保険労務士会連合会「ビジネスと人権」研修で、7回にわたってファシリテーターを務めさせて頂きました(2025年5月現在)。

まず、一つのグループのファシリテーションを5回経験し、

その後、会場全体のファシリテーションを2回経験しました。

前述したように、この研修はILOの技術協力を受けて構築され、メインの研修テキストも、ILOの協力 を得て確認すべき具体的な人権課題について解説した「繊維産業の責任ある企業行動ガイドライン」です。

このような研修で、ファシリテーターとして受講生を導く立場に立たせていただいたことで、ILOの考え方により慣れ親しむことが出来ました。

WFSGI 行動規範への対応支援はお任せください

繰り返しになりますが、全国社会保険労務士会連合会の研修を通じて、私は、LOの技術協力で構築された「ビジネスと人権」に関する研修プログラムを、本当に数多く経験することが出来ました。

それらを通じて、平均的な方に比べれば遥かに、ILOの考え方を学んでいるはずです。

このことは、WFSGI 行動規範 やシマノベンダー行動規範への対応など、ILOの考え方に沿った人権尊重が求められる企業様の支援において大いに役立つはずです。

WFSGI 行動規範やシマノベンダー行動規範への対応に関する支援は、当事務所HCDコンサルティングにお任せください。